G11
性能:

全長         753mm
銃身長        537mm
重量         3.65kg
使用弾薬    4.73mm×33
装弾数        50
連射速度     450発/分
3点バースト時 2000発/分


左図は自作です。
細かいことはキニシナイ。
G11K2をモデルとしております。

下写真はアンディさんから
いただきました
ほんとありがとうございます
≦(_ _)≧
 銃に限ったことではないが、その兵器が発明された黎明期にはいろいろな形のものが試される。結局はベストな形状に落ち着くために新技術でも開発されない限りは似たり寄ったりな兵器となる。その典型は戦車で、素人は見た目では何処の国のなんという戦車かは分からないだろう。たとえばドイツのレオパルト2(初期型)と日本の90式戦車は素人が見た限りでは区別は難しい。
 銃器はというと、19世紀末に無煙火薬と金属薬莢が発明された頃は銃の形状はそれ以前と比べて大幅に変わった。ただ、それらを使用した銃弾はいろいろな形のものが作られた。その頃の銃は大抵は銃弾と一緒に作られた。つまり銃弾と銃本体は新規で作られて同時に販売されていた。
 時代が進むと既存の銃弾を使うように銃器が設計されていった。たとえば小型・中型拳銃ならば今まで販売された中の銃弾を選び、大型拳銃であればそれなりの威力がある銃弾も使えるためにその銃弾を選んで設計されていった。
 時代が進むと性能がいい銃弾も大体限定されてきたため、20世紀中盤以降に設計された銃はだいたい使用する銃弾も限定されてきた。そのためよく使われる銃弾は限定されてくるようになった。ただ、今でも銃弾の種類自体は多いには多いが、過去の銃でも生産自体は行われている理由による。

 軍用に限定すると、1国で使用される銃弾の種類自体は少ない。理由は補給の問題があるに他ならない。ただ、第二次大戦まではたとえばライフルの銃弾は国によってバラバラだった。第二次大戦時、主参戦国(日本・ドイツ・イタリアの枢軸国主力や、アメリカ・ソビエト・イギリス・フランス等の連合国)で主力ライフルの銃弾が同じ国は1国としてなかった。
 第二次大戦が終わると、戦火なき戦い、いわゆる冷戦が始まり、世界は東西に分けられた。この頃から使用銃弾は統一されていく事になる。次に起こるであろう第三次世界大戦は東西とも、国の垣根を越えて連合して戦うと考えられた。そうなると使用される兵器および兵器の弾薬は同じほうがいい。兵器は各国の思惑もあり同じ兵器の配備とはいかないまでも、弾薬は共通のほうがいいのは当然の理由である。これは政治的な思惑もある。東側はソビエトのみが大国で盟主であったためソビエトの意見がほぼ通ったが、西側はアメリカ・イギリス・フランスなど大国が多くなかなか統一はできなかった。それでも、アメリカのゴリ押しで7.62mm×51弾がNATO弾として決められた。多くの国はこれに倣ったが、政治的な思惑からフランスは従わず、独自の銃弾(7.5mm×54弾)を長らく使い続けた。

 さて、軍用銃弾が統一されていったとはいえ、これら銃弾の変遷の過程で共通していたのは全て金属薬包を使用していたことにある。たしかに、連射性を求めるならば金属薬莢のほうがいい。逆に言えば金属薬莢があったからこそ機関銃は誕生したといえる。理由は言わずとしれたことだが、金属薬莢には欠点があるにはある。射撃してしまうと薬莢は用済みになる。至極当然の話だが、射撃してしまうとただのゴミとなる。ただ、当然ではあろうが、その欠点はありあまる利点に打ち消される。

上のイラストとは微妙に形が異なるが数多く試作されたG11のうちの1つ。
生産数が少ないわりには形状が微妙に異なる試作品の数は多い。
下に見えるキャラメルのようなものはG11用のケースレス弾薬。透明プラスチックの部品は装填器。
装填器はスムーズに装填を行うための他に、逆装填を防ぐためにも必須のアイテムと言える。
 薬莢をなくせば余計な重量が減るし、兵士が携行できる弾数も増えるからいいと考えるのは薬莢が誕生した時点で誰かが考えたと思われるが、実際に試作までいったのかはわからない。ただ、実験したところで金属薬莢に勝てるものは出なかったと考えられる。薬莢を紙で作れば燃えカスが溜まっていずれは射撃不能になるし、装薬を樹脂かなにかで固めたところで、数発射撃したら薬室の熱で自然発火するのは目に見えている。ちなみに、装薬の発火温度は雷管の発火温度よりも低く、これは実験でも証明されている(銃弾を火であぶったら雷管が発火する前に装薬が燃焼する)。
 ただ、金属薬莢を無くそうと本気で、本格的に考えたのは第二次大戦末期のドイツ軍だった。無薬莢(ケースレス)の弾薬を作ろうとした理由は簡単で「使用する資源を削減したい」から。薬莢の材質は真鍮(銅と亜鉛の合金)だが、その中の銅は戦略物資だった。銅は電線に大量に使うからだが、当時のドイツでは銅があまり産出しなかった。戦前のデータだが、銅の産出量は、資源小国である日本の3分の1しか取れなかった。そのために、ドイツでは薬莢に真鍮ではなく軟鉄を使った弾も使用していた。銅自体は地球に大量にあるのだが、産出地は南米あたりに偏在していて、ユーロ大陸ではあまり取れなかった。そのため、南米と貿易が活発ではないソビエトでも戦後に軟鉄薬莢が作られた。
 ドイツ軍のケースレス薬莢は結局は完成したらしい。写真が残っておらず、資料もほとんどないが、断片的な資料によると

・設計はポルテ社(クルツ弾を作ったメーカー)
・材質はゼラチン化したニトロセルロース
・ボトルネックがないが、先のほうになるにつれ、すぼまっている(先をカットした円錐形になっている?)
・弾丸の重量は13.48g
・弾丸の直径は8.4mm
・総重量は16.39g(つまり装薬+起爆薬で2.91gになる)
・弾丸は装薬の中に入っている
・そのために装薬には弾の直径と同じ穴がある(G11の使用銃弾のようにプラスチックキャップはないらしい)
・装薬の後ろにはくぼみがありそこに雷管を入れてプラスチックでシールしてある

こんな感じになる。一説にはゲシュタポ用に数千発が生産されたとも言われている。ただし、肝心の、その弾を使用する銃器の資料が全くない。恐らくは手付かずだったか設計段階で終戦を迎えたと考えられる。
 第二次大戦中のケースレス弾薬は存在したというのは、各種資料から確実なのだが、それを使う銃器は存在自体が確認できない。銃器というのは弾薬ありきで設計を行うので(そうしないと適切な銃身長なんかが決まらないし、そもそも薬室の設計ができない)その(設計する)時間すらなかったということだろう。


 戦後になって、ドイツや、ドイツ以外でも(特に研究熱心なアメリカなどで)新型弾薬の開発は行われている。薬莢をプラスチックにしたり、戦車砲のようにサボ弾にしたり、薬莢形状をUの字にしたり(こうすると薬莢全長が短くなるので薬室が短くでき、銃自体の全長が抑えられると期待された)といくつもの試作がされたが、既存の弾薬に勝てるものはなかった。その中でもケースレス弾薬は将来性があるとみられた。.308ウィンチェスターや.223Remのケースレス弾薬が試作されたが、結局は試作のみで終わっている。恐らくは薬室内での自然発火(コックオフ)の問題が解決できなかったのだろう。

 ケースレス弾薬を作ったドイツに目を向けると、ドイツ連邦共和国(当時の西ドイツ)ではアメリカ以上にケースレス弾薬の研究が行われていた。西ドイツでケースレス弾薬を開発していた理由は、戦争末期とは理由が違う。当時の西ドイツでは貿易は活発に行われていたから銅が産出しないという問題ではなかった。箇条書きにすると

・弾薬が軽くなる
 (既存の弾薬における金属薬莢は全体重量の半分近くを占めている)
・弾薬が軽くなると兵士の携行弾数が増える
・弾薬が軽くなると補給面(運送面)でもだいぶ楽になる。
・薬莢を作らなくていいから弾1発のコストが下がる
・それを撃つ銃にしても、排莢工程がいらないから信頼性が上がる

だいたいこんな感じになる。表立った理由はこんなものだが、現実的な理由としては、ドイツのプライドがあったのではなかろうか。たとえ負けたとはいえ、アメリカ・ソビエト・イギリスといった超大国と五寸で渡り合った国である。その戦った兵器類もこれらの国の兵器と比べても決して遜色なかった。戦いに負けて、政治的にも軍事的にもアメリカの尖兵とならざるを得なかったドイツだが、その誇りがそうさせたのだろうか。

 ケースレス弾薬の銃弾は弾薬の大手メーカーであるダイナマイト・ノーベル社が開発を行い、銃器本体の設計はH&K社が行った。ただ、いざ設計・製作してみるといろいろな問題が分かった。ケースレス弾薬でも不発が起きるので、その際にどうするかという問題があった。ただ、これは排出する装置をつければいいだけなので、深刻な問題点ではない。また、射撃する際に薬莢があると、それ自体がガスシールを行うのだが、ケースレス弾薬では薬室自体に発射ガス漏れ対策を行う必要があった。また、射撃の際に薬莢が放出されるが、同時に熱をも放出している。ただ、ケースレスにするとそれができないので、予想以上に熱がこもる。つまりは熱くなる時間が早くなるから射撃不能になる可能性も高い。あとこれが一番の問題なのだが、ケースレス弾薬だと薬室の熱がモロにあたるので、自然発火(コックオフ)の可能性が高かった。

 コックオフ問題は銃器の設計でなんとかなる問題ではないためにケースレス弾薬の改良が何度も行われた。ダイナマイト・ノーベル社で製作されたケースレス弾薬は当初は装薬に半分ほど弾頭を埋め込んだ形をしていたが、最終的には弾頭が装薬にすっぽり包まれた形状のものを開発している。その装薬の形も、初期の頃のは真正面から見たら丸みをおびた長方形だったが、最終的には真正面から見たら正方形になっている。雷管の位置も、試作品では横に雷管がついている形状もあった(理由は不明)。

 銃器の方といえば、弾薬が変わるたびに設計変更を行ったと想像されるが、設計の都合でケースレス銃弾を変えた事もあったろう。先に述べた横に雷管をつけた理由は銃器側の設計上の問題とも思えなくはないが、薬室の側面に撃針をつけてもメリットはないと思える。

 銃器の方はなんとか試作品ができた。仮に「G11」という名称が与えられた。1977年頃には弾薬もG11も完成し、同時期に行われたNATO軍用の新弾薬トライアルにも参加した。ただ、評価は散々だった。数十発撃っただけでコックオフが起こったという。それから、ケースレス弾薬、銃器共に改良につぐ改良が行われたが、なかなか結果がでなかった。
 西ドイツ軍(当時)ではこのケースレス弾薬を使った突撃ライフルを次期主力ライフルと考えていたために、周囲の国が7.62mm×51弾使用の自動ライフルから、5.56mm×45弾を使った突撃ライフルに切り替えていったのにもかかわらず、ずっとG3自動ライフルを使いつづけていた。そういう事情もあって、ケースレス弾薬・銃器共に開発陣が、軍側から有形無形の圧力があったのではないかと思えなくもない。

 ようやく完成の域に達したのは1989年の事だった。コックオフの問題は依然残ったが、普通に使う分には問題はないとされた(ようは、5マグぐらい連続で射撃するとか普通の薬莢式でも無茶だと思える撃ち方をしないとコックオフが起こらなくなった)。ただし、完成の域に達すると、当初想定されていたメリットは殆どかき消されていた。

 銃弾が軽くなったために、携行弾数が増やせるという利点だけは得ることができたが、それ以外は想定から外れることになった。
 薬莢が不要になるから弾1発の値段が安くなると思われたが実際には余計に高くついた。理由は装薬自体をちゃんとした形状で固める必要があるし、きちんとした形状にしないといけないので、それだけでも薬莢以上に手間がかかった。しかも、ケースレスでも雷管がいるのでそれも作らないといけないし、ケースレス弾薬では薬莢式にはない部品(ブースター、弾頭キャップなど)も作って装着しないといけないので余計に手間がかかった。当時、弾1発が1500円以上と言われたが、たとえ量産した所で1発300円を切ることはなかったろう。
 排莢工程がなくなるので機関部が単純化できるというのも机上の空論だった。上で書いたように薬莢がないので発射時の圧力を薬室で全て受け止めないといけないからどうしても頑丈につくらないといけないし、排莢しないといっても次弾装填は必要だからその動作は必要だったから、単純化どころか既存の銃器よりも複雑化した。

 結論を言えば当初の目論見からは大きく外れることになった。理由や過程はどうにせよ、コスト面でのメリットは全くと言っていいほどG11にはなかった。追い討ちをかけるように、東西ドイツの統一によって、軍事に金をかける必要がなくなってしまい、軍備を増強する必要がなくなり、逆に統一した後の(格差是正のための)予算が必要になったために、その予算をもってくるために、軍事費はいの一番に削られた。この時点でG11は政治的にも軍事的にもその生命を絶たれたと言ってもいいだろう。

 技術に溺れた好例と言えなくもないが、これなかりは開発陣を攻めるわけにはいかないだろう。なにせ「やってみないと分からない」のだから。むしろ、ケースレス弾薬を使った初めての突撃ライフルを苦心の末に実用レベルまでもってこれた開発陣を褒めるべきではないだろうか。



 G11突撃ライフルは見た目にはそう見えづらいだろうが、一種のブルパップ式ライフルである。G11は排莢しないので、たしかにブルパップ方式には一番適していただろう。全長も753mmと他のカービンライフルと遜色ないほどの短さである。ただ、全高がかなりあるのでお世辞にもコンパクトにまとまっているとは言えない。無論、意図的ではなく、原因は機関部にある。G11の機関部は回転運動で次弾装填を行うので、横に倒れた円柱形をしているために高さ方向に大きくならざるを得ず(既存の自動式ライフルは前後動で装填・排莢を行うために高さ方向はある程度は圧縮できる)、しかも、ちょうどこの機関部あたりに頬がくるのでここにくびれを設けることができなかった。そのためにのっぺりとした銃床部分になったのだが、同じ理由で照準点が高くならざるを得ず、キャリングハンドルと称したスコープを載せざるを得なかった。スコープ式にしたのは、ステアーAUGやL85A1などのブルパップ式突撃ライフルと理由は同様で照準線が長くとれない理由による。このスコープは倍率が不明だが、一応、壊れた際のバックアップにスコープ上に切りかきがありこれで照準ができるようになっている。

 作動方式はガス圧作動方式で、これは既存の銃器と変わらない。銃身の下方に穴をあけてそこからガス圧を導いて機関部を動かす。ちなみに、突撃ライフルでガスチューブが銃下部にあるのは珍しい部類に入る(熱を持つのでハンドガードが加熱して銃の保持ができなくなる可能性があるために通常の突撃ライフルはガスチューブを上方にもってくるため)。機関部は上で書いたように回転して次弾装填を行う。薬室自体が回転を行って下を向いている弾を受け取って、90°回転して発射スタンバイの位置までもってくる。こういう方式にした理由はよく分からないが、恐らくは、不発対策ではなかろうか。G11は不発の際には銃の機関部左にあるハンドルを回して不発弾を排除するようになっている。弾の形状上、前後動だと弾の排除が難しいからだろう。この理由でG11の下部には穴があいている。同時にこの穴は薬室を掃除するためにも使われていることだろう。

 弾倉は50発入る。これはライフルとしては多いほうだと言えるが、こうした多弾倉は嵩張るといった欠点を同時に抱えている。G11も例外ではないが、こうした苦情はあまり聞かない。制式採用されなかったのだから苦情が来なかったのが理由だろう。G11は構造上、短い弾倉を使えなかったので、制式採用されたら問題になった可能性が高い。余談ではあるが、装填の際には弾倉自体が前後動を行う。G11はケースレスなので、射撃時はどこも動かないと思われるが、これは間違いで、弾倉が大砲の制退器よろしく前後する。

 G11はセミオートとフルオートで射撃するのは無論の事、3点バースト発射装置も備えている。面白いのは、フルオート時には450発/分という92式重機なみの遅さで発射するが、3点バースト時には2000発/分の高速発射を行う。理由はちゃんとあって、フルオート時の発射速度の遅さはコントロールを容易にするためで、3点バーストの発射速度の速さは射撃時のブレが来る前に3発撃ちきろうとさせるため。そのため、3点バーストで射撃では見た目には1発しか発射していないように見える。3点バースト射撃ではグルーピングが1mほどになり、これは歩行速度(4km/h)で歩く兵士に対して修正不要で射撃して当たるグルーピングだという。

 G11突撃ライフルは、上で何度も述べたように利点をあげれば、ケースレスで排莢しないので左右両方の射手が射撃しても問題はないという点が挙げられるが、明らかに欠点も多かった。
 まずは、値段の問題。上でも書いているが、銃弾の形状が特殊で、生産数も抑えられたために弾の単価が嵩んだ。銃器本体の値段もかなり高かったという。理由は開発に凄まじいほどの金がかかったために、元をとるために銃器に値段を載せてしまうと機関銃以上に金がかかったという(具体的な値段は不明)。
 作動方式は機関部を回転させる方式だが、機関部自体、高圧に耐える必要があるから頑丈に作られているために重量もかなりある。それが回転するのだから、余計な力(遠心力)がかかるし、弾倉も動いて装填を行うために、お世辞にも機構の単純化は達成できていない。動く部品が増えるということは壊れやすいという欠点を併(あわ)せ持つ。制式化されていたら潜在的な欠点となっていただろう。
 弾倉を交換する際はどうしても手が前に出る。誤って銃口に手を出してしまい、その際にコックオフが起こったら手を撃ちぬいてしまう。理屈の上では有り得ないのだが(弾切れしてから交換するため)、そうした備えは必要だろう。
 形状上、行軍時の保持が難しい。キャリングハンドルがついたライフルはいくつかあるが、行軍の際は普通は使わない。そのために行軍時にどうやって保持したのかはわからない。昔の日本軍のように肩に掲げて行軍するスタイルを考えていたのだろうか。同様の理由で銃剣戦闘にも適さない。ただ、今の戦闘では銃剣戦闘は起こりえないし、ドイツ軍は伝統的に銃剣を軽視しているので欠点とは言えないだろう。ちなみに、G11用の銃剣はある。

 G11突撃ライフルは使用する銃弾が特殊であり作動原理は言葉では表しにくいので下図に示す。