U.S.M4カービン
性能:

全長        838mm
    (折りたたむと757mm)
銃身長       370mm
重量        2.52kg
使用弾薬  5.56mm×45
装弾数      20・30
発射速度    800発/分
初速       921m/s


左絵は自作です。
銃がやたらデカいんです(;_;)
いずれ書き直しますんで(;_;)
 Carbineとは日本語にすれば「騎兵銃」となる。名前のように騎兵が使うための銃で、歩兵が使うRifleよりも短くする必要があったために呼び分ける必要があったからこういう別の名前が付いたのだろう。騎兵が無くなっても、「カービン銃=短めのライフル」ということになりその名前のみは残ることになった。

 第二次大戦期の歩兵用ライフルの全長はは各国で多少の違いはあるが、1メートル以下の歩兵用ライフルはほとんどなかった。第二次大戦中に作られた突撃ライフルという弾の威力を落としてでもフルオート射撃可能にしたライフルが世界中で普及してくると歩兵用ライフルも1メートル以下のものがほとんど全てとなった。
 第二次大戦以降にライフルの全長が短くなっていったのは使う銃弾の装薬が減っていったからでもあるが、短くしなければいけない事情もあった。第二次大戦末に使われた原子爆弾と1950年代初めに実験が成功した水素爆弾はいずれ起こるであろう第三次世界大戦では使われるかもしれないと考えられた。こっちが使えば相手も確実に使ってくるのは目に見えていたからおいそれと使えなかったが、その備えは絶対に必要だった。たとえば核兵器が使われた地域は放射能まみれだが、そんな地域にも兵員を展開する必要がある場合もあると考えられた。生身の人間を行かせるわけにはいかず、完全密閉された車両に兵員を乗せて行動させることだった。兵員には防護服を着せて必要な時のみ下車させれば良かった。その方が兵員も疲れないで済む。完全密閉なのだからその車両の開口部はあまり大きくできなかった。長いライフルだとつっかえるのが目に見えており、また、下車させずに完全密閉の兵員輸送車に装着した銃眼から射撃するにも短いほうが良かった。そのために、ドイツのG3ライフルのように全長を抑えるのが難しかったらストックを折りたたみ式にしてでも短くしようとした。

 1970年代後半になってくると、歩兵とはいえトラックやジープなどの車両で移動するのは常識となっており、車両に搭載したり、車両から展開するにはやはりライフルは短いほうがいい。そのためにこの頃からブルパップという、グリップと弾倉の位置を逆にしたライフルが登場した。グリップと床尾板(しょうびばん。パッドプレート)の間に弾倉および薬室をつける事により銃身長を短くすることなくライフルの全長を短くできた。オーストリアのステアー社のAUG、フランスのサンデーヌ造兵廠のFAMAS、イギリスのL85A1などが誕生していき、ブルパップライフルは世界各国でも注目を集めていた。

 1990年代になるとその状況も変わっていった。ソビエトの崩壊で大国同士の戦いが起こる事は考えにくくなった。また、ソビエトの崩壊で親ソ国もその対応を迫られた。民主化を行いつつ、経済を発展させるためにその枷となっていた軍事費削減のために兵員を削減し、兵器類も削減していった。その余剰兵器が闇ルートで世界にばら撒かれた。また、ソビエト崩壊前に起こった湾岸戦争でイスラムの過激派がアメリカを敵視するようになった。それらが複雑に交差して、テロやゲリラ戦が各地で展開されるようになった。テロリストや反政府勢力は正規軍に真正面から戦っても勝てないから、市街戦やジャングルなどで戦うようになった。そういう戦いになるともはやブルパップライフルはあまり使えない銃器となりつつあった。ブルパップライフルは構造上、排莢口が自分の頬の反対側になる。だから、自分の利き手以外では使えない。市街戦などでは状況によってはライフルを左右に持ち替える必要があるから、それができないブルパップライフルは使う側には不便極まりなかった。ステアーAUGやFAMASは排莢口を左右に切り替えできるが、戦闘時に簡単にはできないので、やはり利き腕で撃たないといけなかった。しかし、こういう状況ではやはり短いライフルが必要であるのは容易に想像できるだろう。

 話はさかのぼって、カービン銃はアメリカでは1941年のM1カービンから明確に区別されて制式化されてきた。その後にM1カービンをフルオート可能にしたM2カービン、そのM2カービンに暗視装置をつけたM3カービンと次々に番号が振られて制式化されたが、基本的にM1カービンの発展型で新規採用ではなかった。1960年代に全長が1mを切ったM16突撃ライフルが制式化されると、特にM2カービンを使っていたアメリカ空軍はその後釜として採用した経緯がある。また、アメリカ陸軍でもこのM16突撃ライフルとその短縮化バージョンであるXM177を採用した。ただ、MX177は短機関銃扱いとされた。つまり、この時点でカービン銃というジャンルの銃は名前的には廃れたと言っていいだろう。

 1980年代になって、M16A2が制式化された。使用銃弾の変更によって銃身のライフリングツイストが変更されたために、新しくこの銃弾用の短縮型が作られた。この型はM725と呼ばれた。このM725は主に特殊部隊に配備されていたが、グレネード発射装置のM203が装着できなかったために評判はあまり良くなかった。そのためにグレネードガンナーはM16A2を装備していたが、普通に考えてもいい運用とは言えなかった。
 1984年頃、このM725の銃身の一部を細くくびれさせて、M203を付けられるようにしたM727が作られた。一説にはアブダビからの依頼があったとされる。そのためにこのM727は俗に「アブダビカービン」と呼ばれるようになった。これは特殊部隊には好評で、早速M725にとって代わったとされる。
 M727は隠れた名銃と言われている。「隠れた」というのには説明がいるだろう。このM727が採用された1980年代中頃はまだ冷戦が行われており、大国同士の大規模戦闘ではまだ普通のライフルがいいとされていた。この時期にはハイジャックは廃れていたが、まだ行われており、またテロリストが大使館などを占拠する事件も頻繁ではないにせよ行われていた。狭い航空機やビル内ではたとえカービン型だろうが突撃ライフル弾は威力がありすぎるとされ、拳銃弾を使う短機関銃が最適とされていた。よくニュース報道で知られた警察の特殊部隊が使っていたのはMP5短機関銃だった。そのせいもあり、特殊部隊の使う銃=MP5というイメージが定着していっていたからM727が隠れた存在になったからだと言える。

 湾岸戦争後、上で書いたように冷戦構造が崩壊し戦闘のあり方が代わってくるとカービン銃が再び脚光を浴びるようになった。M727がクローズアップされ、これをベースに新型カービン銃が生まれた。1994年にU.S.M4 Carbineとして制式化された。実に50年以上ぶりにカービン銃が制式化されたことになる。
 M4カービンは派生型にM4A1カービンがある。両者の違いはM4はM16A2と同じくフルオート射撃が不可能で3点バーストと単発でしか撃てないのに対して、M4A1カービンは逆に3点バーストの代わりにフルオート射撃ができるようになっているのが違いで、それを除けば両者はほぼ同一の銃で、重量もほとんど変わらない(3点バースト機構を組み込んでいない分M4A1カービンの方が軽いはずだが、カタログ上では同一重量になっている)。

 このM4カービンは大々的に使われたのが2003年のイラク戦争で、映像を見る限り一般兵士にも配備されているようで、多くのM4カービンが映像に映ることになった。

 M727とM4カービンの違いはあまりないが、M727が基本的にオープンサイトでの射撃が前提なので暗視装置やダットサイトを装着した際に頬あて(チークピース)が必要だったが、M4カービンではキャリングハンドルを兼ねた照門(リアサイト)が着脱可能になっている。これはなんともない事かと思うかもしれないが、英断であったと言える。なぜなら、普通のライフルは照準の狂いを防ぐために照門と照星が銃身と機関部を通じて固定されている。着脱可能にすると外して、再度装着した場合に照準が狂うからで、まぁ、任務に応じてキャリングハンドルなりダットサイトなりを装着して試射を行うだろうからそれでも良かったのだろうか。上でも書いているが、今の戦いは室内戦闘も必要になってくるのでダットサイトが普通に取り付けられて頬当てがいらずに撃てるのは大きな利点だと言える。室内のように暗い場所ではオープンサイトでは照準のしようがないのと、咄嗟(とっさ)に照準をしようとすると、オープンサイトでは合わせるのが少し手間がかかるが、ダットサイトでは少し覗き場所が違えてようと、赤い点の場所に狙って撃てばよい。そうした事から、ダットサイトは室内戦闘の必需品となりつつある。

 他の違いはあまりない。大元のM16A2と比較しても操作面ではほぼ同一なので転換訓練もほぼ不要という利点もある。つまりは、3点バースト機構が歯車式なので、射撃時にたとえば2発撃って引き金を戻した場合に、再度引き金を引くと1発しか発射されないという欠点をそのまま引きずっているし(余談ながらラチェット式の89式小銃では3点バーストモード時に、2発撃って引き金を戻しても、再度引き金を引いたらちゃんと3発発射される)、ハンマーをコックしていないとセレクターをセフティにかけられないのもそのまま引き継いでいる。

 M4カービンおよびM4A1カービンは性能的にもかなりよく、他国でも採用されている。日本でも一部の特殊部隊に採用されているといわれている。バリエーションも多く、警察用のM4カービンはM203グレネードランチャーを装着しないので、銃身のくびれがないタイプが採用されているし、イラク戦争後に知られるようになった、アメリカの警備会社(一種の傭兵)でもその任務に応じた改造を施したM4カービンが採用されている。