リュングマンAG42
性能:

全長      1215mm
銃身長     640mm
重量      4.40kg
使用弾薬 6.5mm×55
装弾数      10
初速      750m/s

左の写真はAndy太郎さんからいただきました。ほんとありがとうございます。
≦(_ _)≧
 今では当たり前ともなった自動式ライフルであるが、自動ライフル自体は19世紀には完成しており、実際の軍隊にも採用している国もあった。ただ、第二次大戦においてもアメリカを除いてボルトアクションライフルが主役であったように、自動ライフルはあまり注目されなかった。理由はある。当時は自動ライフルが発展途上で故障が多発した事。これは手に持つ兵士にとっては重要問題である。なにせ自分の銃の故障は自分の命を敵前に晒すと同義である。また自動式にするとどうしても撃ちまくってしまうので、弾薬消費量が多くなる(戦場では食うか食われるかで、とにかく相手を仕留めるまで撃ちまくったろう)。当時は補給線を支えていたのは馬であり、馬の機動力・搬送力では自動ライフルの弾薬消費量を供給するだけの力はなかった。また、これが決定的要因であるのだが、構造が複雑なので単価が高かった。とにかく兵士分揃える必要があった歩兵ライフルではこれが響いたといえる。ようは第二次大戦前の当時の考えでは自動ライフルはその投資に見合う分の戦力がなかったと考えられていた。

 その考えが崩れたのは第二次大戦だった。第一次大戦と違って、塹壕と鉄条網と重機関銃に守られた陣地をいかに突破するかという戦いではなくなっていた。戦車が陸上戦闘の主役となり、その機動力が勝敗を左右するようになった。海戦や空中戦と違って、陸上戦は最終的には兵士個人が最小戦闘力となる。散兵戦術と機動戦が主体になると、重たい重機関銃はお呼びでなくなり、どうしても個人のライフルは自動式が良くなってきた。当時の戦略面でいえば自動ライフルとボルトアクションライフルを比べた場合にはあまり大差はなかったと言えるが、戦術面でいえばその差は大きかった。だって、こっちが1発撃つ間にあっちは5発撃ってくるんじゃ気が滅入るに決まってる。ただ、歩兵ライフルは上で書いているように兵士分揃える必要があるために、自動ライフルが投資に見合う以上の価値があると判っていても、生産力と即戦力などの問題からおいそれと更新ができるはずもなく、第二次大戦中に新しいライフルに全て更新した国は1つもなく、戦前のライフルでどの国も戦ったのだった。

 第二次大戦中、中立を守りとおしたスウェーデンではあったが、さすがに、中立宣言をしたからといって、どこの国も攻めてこないという保証はなく、軍備は必要不可欠だった。第二次大戦での戦訓に注目したのか、スウェーデン軍は自動ライフルの開発に着手した。エリック・エクルトンという人が設計を行い、完成したのがAG42という自動ライフルだった。俗にリュングマンAG42と呼ばれるのだが、この「リュングマン」というのはどっからきた名前なのかが良くわからない。
 リュングマンAG42はスウェーデン軍に採用された。しかし全ての兵士に行き渡ったというわけでもなく、ボルトアクションと混用して使われていた。後に西ドイツのH&K社のG3ライフルの改良版AK4が採用されるまで使われつづけていた。

 スウェーデンは永世中立という平和的な立場から武器輸出は行なわないイメージがある。実際にほとんど行なわれていないが、このリュングマンAG42はエジプトへの売り込みに成功している。第二次大戦が終わったすぐの事で、当時はエジプトは情勢不安で、とにかく戦力の増強が第一であったためでもあるだろう。なにせ外に内にと敵を抱えていたのだから。このリュングマンAG42は買いつけだけでなく、エジプト国内に工場を建設させて生産にとりかかった。不幸なのは、建設して本生産にはいった時にナセルの革命でエジプトの王制が倒されてしまったことにある。このリュングマンAG42の工場は没収され国有工場となった。工場建設代を支払いながら利益を得られなかったカールグスタフ社は大損だったそう。ちなみに、リュングマンAG42自体は生産が続行され、「ハキム」と名前がつけられ配備された。しかしアラブ諸国は後に名銃AK47の登場でこれに切りかえる国が多く、リュングマンAG42もその波に飲まれて歴史の中に消えていった。

 リュングマンAG42は上で書いたように、地味な不幸なライフルであったが、このライフルの注目すべき点は作動機構にある。リュングマンAG42は作動方式にガス圧を使うのは他の自動ライフルと同じだが、決定的に違っている点は、普通のガス圧式自動ライフルはガス圧を一旦ピストンに押しつけてそのピストンが遊底を押してボルト閉鎖解除を行なうけども、リュングマンAG42はガス圧を直接遊底に吹きつけて作動させる方式を採用している。この作動方式は後にアメリカのM16シリーズに採用されて一躍有名になった。ガスを直接吹き付ける方式をリュングマン方式というのはこの銃の名前が由来になっている。リュングマン方式の利点はピストンがいらないので、重量を軽くできる点にある。ただ欠点もあって、掃除が必需でサボると作動不良を起こす可能性がある。そのせいか、リュングマン方式はあまり採用される傾向にはない。