FN FAL
性能:

全長       1090mm
銃身長       533mm
重量         4.33kg
使用弾薬  7.62mm×51
装弾数        20
初速       850m/s
発射速度   700発/分

左絵は自作です。過去にコミケで出した本のイラストをそのまま転用しています(逝)

下の写真はsteel gunnerさんとアンディさんからいただきました
ほんとありがとうございます
≦(_ _)≧
↑FALを右側面から見た図。
バイポット(ニ脚)が長めなのは下写真にある30発弾倉を使用してもつっかえないようにするため。
バイポットは標準搭載ではない、下にあるハンドガードの用途は不明。
分隊支援火器のような運用を考えてのバイポットだろうか。
 ベルギーという国は日本では無名ではないにせよ、小国ではあるためにあまり印象ある国とは言えない。第一次大戦と第二次大戦ではドイツ軍に真っ先に占領されたこともあるほどの小国で、特に第一次大戦前と第二次大戦前のドイツ軍のフランス侵攻作戦構想では両方とも、ベルギーの中立を無視した作戦が立てられた。ようはドイツ・フランスが直で接している所は当然フランスの防備が固いから横から攻めればいい。特に森林や大河などの傷害物がなかった低地諸国三国(ベルギー・オランダ・ルクセンブルグ)はその格好の進撃路となった。小国ゆえ、その進撃を独力で防ぐ手段はなかった。
 日本でベルギーが知られているといえば、ベルギーワッフルとサッカーが強いぐらいなもんだろう。ただ、銃器マニアには有名なFN社という銃器メーカーがある所としてよく知られている。特に長らく使用された軍用銃に「ハイパワー拳銃」というのがあるし、これから紹介するFAL自動ライフルも長く、そして多くの国に使用された。

 FN社の技師の何人かは1940年5月に始まったのドイツ軍侵攻でイギリスに逃れ、そこで新型ライフルの開発をしていたとされる。戦後、彼らが作ったのはSAFNと言う自動ライフルだった。このライフルはセミオート射撃しかできなかったものの、性能自体は満足いくものでいくつかの国に採用され、特にエジブトからは大量の発注が来た。残念な事に全部を納入する前にエジプトで革命が起きて王制は崩壊してしまった。
 SAFN自体は普通のライフルではあったが、これからの戦闘では歩兵個人の火力が重要視されると戦訓で得ていたために、どうしてもフルオート機能を持たせる必要があった。完成したのが後にFALと呼ばれる自動ライフルだった

↑FALのカービンモデル。ただ、FAL自体は強装薬使用の銃のために短くするにも自ずと限界がある。
 1948年に原型が完成したとされる。ただ、当時想定していた弾薬は7.92mm×33や.280などの小口径弾薬だった。FAL自動ライフルはSAFNと違いフルオートもできるように設計されてるため当然とも言える。しかし、1950年代にアメリカはNATO軍制式弾薬を.308ウィンチェスター(7.62mm×51弾)に制定したためFALもその銃弾用に設計をし直した。この弾薬選定は今でこそ失敗だと言われている。結果を知っている我々の意見を言うならば、たしかに全くその通りだと結論を出さざるを得ないだろう。だが、やはり後知恵の意見であることは今の人間も考える必要はあるだろう。

 しかし、決まってしまったのはしょうがなかったものの、フルオートでの射撃精度が大幅に落ちた。しかし、FAL自動ライフルの完成時点でライバルのライフルが存在せず、またFAL自動ライフル自体も優れた性能、そして優れたデザインであったために採用国は多くに登った。実に50ヶ国以上にのぼりライセンス生産していた国も多かった。FAL自動ライフルの完成の後にアメリカでM14自動ライフルやAR-10自動ライフルなどが完成したが、FALの優位は崩れなかった。ただ、西ドイツ(当時)のG3自動ライフルはそこそこに営業的成功を収めたためにFAL自動ライフルのライバルはこのG3自動ライフルだったと言えるのだろうか。

↑本物ではないです(^^;)
 多くの国で採用されたために、当然ながら世界各国の戦争・紛争で使われた。ローデシア(現ジンバブエ)での戦いでも使われたし、また、同じFAL自動ライフルが敵味方で使われたという例もあった。フォークランド紛争ではイギリス軍とアルゼンチン軍の双方が使っており、特にイギリス軍のFAL自動ライフル(イギリスではL1A1と呼ばれていた)は現実的でないという理由でフルオート機能が省かれていたが、アルゼンチン軍にはフルオート機能がそのまま残っていた。また、折りたたみストック型を装備していたために持ち運ぶ際はコンパクトにできた。そのためにイギリス軍兵士でアルゼンチン軍のFAL自動ライフルを捕獲したときは好んで使用したと言われている。

 今では弾薬体系が世界的に5.56mm×45弾になりつつあるために、FAL自動ライフルは退役傾向にある。ただ、今でもどこかで使われているのは間違いない


 FAL自動ライフルはデザイン的にはオーソドックスな構造ではあるが、これの原型が1940年末には出来上がっていた事を考えれば先進性はかなりあったとも思える。上の写真ではプラスチックグリップに銃床(ストック)であるが、初期のタイプは木製だった。
 上の写真の上は分隊支援火器(SAW)タイプで下がカービンタイプとなっている。通常のFAL自動ライフルには2脚(バイポット)は存在しない。ちなみに、上の写真では銃口消炎器がついているが、初期の製品にはついていなかった。
 FAL自動ライフルの外見的特徴といえば、運搬用ハンドル(キャリングハンドル)があることで、これがあると、持ち運びの際に楽だといえる。ただ、通常移動の際にのみ使って、戦闘行動の時には使わない。というか使ってはいけない。このキャリングハンドルは折りたたみが可能となっている。
 コッキングハンドルは機関部左側にある。これはMP43の影響としか思えないのだが、操作してみると、案の定というか操作しにくい。コッキングハンドルを左側面にもってくるならG3のようにハンドガード上にもってきたほうが操作はしやすい。セレクターも左側面にある。比較的大型で操作はしやすいが、小柄な手の人にはしにくいかもしれない。
 
 内部的には、FAL自動ライフルはオーソドックスなガス作動式で見るべき点はない。昔の鉄砲だからだろうか、機関部が削り出し加工で作られている。これは製作に手間がかかるという欠点はあるが、プレス加工と違って、1つの鉄の塊から作るので耐久性が高い。それがFAL自動ライフルが長らく使われてきた理由の1つかもしれない。また、削り出し加工はプレス加工と違ってボルトアクションライフルが作れる設備があれば作れるためにライセンス生産国が多かった理由の1つとも思える。東側のAKシリーズも機関部がプレス加工で量産しやすいAKM登場後にも機関部が削り出し加工のAK47がソビエト以外の国で作られつづけた理由もそこにあるだろう。

 弾倉(マガジン)には20発の銃弾を入れることができる。装着方法はMP43やM16のようなリリースボタン式ではなく、右写真のように弾倉受け(マガジンハウジング)の前に弾倉を引っ掛けて後方に回転させるようにして固定する。ちょうどAKシリーズやドイツのG3ライフルと同じ方式になっている。取り出すには弾倉受け後方にあるリリースレバーと弾倉受けを一緒に握るような感じでリリースレバーを作動させて、装着の逆の動作をすればいい。この着脱方式は外れにくいという利点がある。また誤動作で弾倉が外れにくいという利点もある。しかし、M16などのリリースボタン式と比べると素早く弾倉交換ができにくいという欠点もある。

 銃弾は5発1組のクリップに入った状態で支給されてくる。弾を弾倉に装填する際は右図のようなクリップガイド(正式には「マガジンフィラー」と言うらしい)を弾倉に装着してジャラジャラっと押しこむ。この動作を4回すれば素早く正確に弾込めができる。クリップガイドは銃に1つ付属している。
 クリップガイドがない場合は、クリップから弾を抜き取って1発1発積めこむ必要がある。手詰めは正確さに欠けるために、最後の1発を込める際にそれを指で押しこんでちゃんと下がるかを確認する。銃弾先端が弾倉前方に引っかかっている可能性があるため、下がらない場合は弾倉後ろを手でひっぱたくように指導されている。アメリカ映画でBARなどの弾倉を装填する際にヘルメットでコンコンと弾倉を叩くのはこういう理由がある。
 どっちの装填方法でも、戦場においては大抵1〜2発ほど銃弾を抜くようにしている。理由は、めいっぱい積めこむと装填不良を起こすので(弾倉のバネが圧縮されすぎて銃弾がボルトをめいっぱい押してしまうため)そうする場合が多いらしい。言うまでもなく、軍隊での教育ではそうしたことはさせていない。
 1人あたりの弾倉装備数は採用国によってまちまちだけど(マガジンポーチなどのアクセサリー類が異なってくるため)イギリス軍の例では通常は8個装備が標準だった(銃に装着している1つを含めて9個になる)。ただし戦場においてはそうした服務規定はある程度は無視されるようで、イギリス軍のフォークランド紛争時においては14個装備した例もあった。

 FAL自動ライフルは上でも書いたように当初は銃口消炎器を装着していなかったが、.308ウィンチェスター(7.62mm×51弾)は強装薬で発射炎がひどいこともあって消炎器がつけられた。単発ならまだいいんだろうが、連発で撃つこともできたのでさすがに目が眩むので必要な機器であったのだろう。この消炎器は外形22mmでこれは外装グレネードを装着できるようにこの外形となっている。NATO軍全てでこのグレネードを装着できるように消炎器の外形は各国で22mmとするようになった。余談ながら、電動ガンでFAMAS・M16A1・M16A2・G3A3の保護キャップが共通使用が可能なのはこれが理由でもある。
 外装グレネードは消炎器に付けて撃つ事ができる。発射には空砲を用いなければならない。実弾を使えばもちろん眼前で大爆発を起こす。発射の手順としては

・安全装置をかける
・コッキンハンドルを引いて薬室(チャンバー)にある実弾を抜く
 実際に入ってなくてもこの動作を行って薬室に実弾がないことを確認する
・コッキングハンドルを左手で引いたまま右手で空砲を排莢口(エジェクションポート)から装填する
 この時に特に銃の向きは指示はないが、銃口を下にしたほうが当然やりやすい。
・ハンドルを離す
・グレネードを装着する
・安全装置解除。これで撃てるようになる

 というのがマニュアルに記載されているが、実際には弾倉は抜かないといけないのだろう。また、東側諸国のAKシリーズのグレネードの発射時にはガスカットをして、ガスピストンに発射ガスが向かわないようにしている。理由はグレネードの発射方法は、空砲の発射ガスを銃身内に充満させて、その大圧力で重たいグレネードを飛ばすために反動が強く当然ガス圧も強い。この状態でガスピストンを作動させると銃が壊れる可能性があった。ただFAL自動ライフルにはガスカット機構がないために、この点はどうやって解決しているのだろうか?耐久性があるからそれでもいいのか?
 発射は右上写真のように行う。見にくいが、銃床(ストック)を脇に抱えている。上で書いているように反動が強いので肩には絶対に当てないように指導されている。肩に当ててうつと当然ながら肩を脱臼してしまう可能性が高かった。場合によってはスリングベルトを使って照準を定める方法もある。これは特にどうしろとマニュアルには詳細な記載がないので、射手の判断と経験に任せるといった方法ではある。
 脇に抱えて撃つ方法は直接照準式で、射程を延ばすように仰角をかけて撃つ方法は右写真のように地面に置いて撃つ。この際はグリップが自分に、ようは銃を逆にして撃つようにする。そうでないと引き金が引きにくいからである。地面につける際はアスファルトやコンクリートなどの固いものに乗せて撃ってはいけない。特に伏せた状態で撃つ際は反動を避けるために行いがちだが、固いものに乗せて撃つとその物体自体が反動を吸収しないために銃本体に負担がかかる。結果的に銃が壊れやすくなるという事になる。

 FAL自動ライフルは採用国も多く大量に作られたせいもあり、バリエーションも多い。上で書いたように初期型は木製ストック&木製ハンドガードだったけども、途中でプラスチックに代えられた。また、上の写真の下のカービンタイプ(銃身を切り詰めた型)や分隊支援火器(SAW)用のFAL(上の写真の上方)もあった。分隊支援火器用に30発弾倉も作られた。これは普通のFAL自動ライフルでも使えたが、伏せ撃ちが困難で(分隊支援火器には2脚がついているので地面と干渉しない)、またジャム(薬莢が詰まること)が多発するために、あまり普及しなかった。