2.7cm突撃拳銃
写真ないっす(;_;)
性能:

全長      305mm
(ストックを開くと 584mm)
銃身長     180mm
重量      2.50kg
使用弾薬  26.6mm
装弾数      1

(上記データは2.7cmStPのものです)
 何時の時代の戦闘もそうなのだが、部隊同士の連絡は重要だった。バラバラに攻撃しては戦力も半減してしまう。各部隊が連携した攻撃がなによりも強力で重要だった。昔は無線設備が発達していなかったのでいろいろな連絡手段が取られた。伝令なんかは昔から使われているが、戦術レベルならともかく戦略レベルでは伝令は伝達が遅かった。戦国時代では代表例は狼煙だけど、夜になったら伝達できないし手間もかかる。手旗信号は今でも用いられているけど、やはり夜には伝達できない。発光信号は通信に少し手間がかかるが発光信号でモールスを送るのは利点もかなりあるので、それ相応な状況で使用されている。ただ、突撃などの伝達は単純な信号でいいから、拳銃を大型化した信号弾が用いられていた。上に打ち上げてパッと光るだけだけど、突撃合図ならそれで十分であった。無線機の発達が遅れていた日本軍では相当に多用されていた。真珠湾攻撃の突撃信号も電鍵と信号弾を併用していた。もっとも無線機が劣悪だったからといえる。日本陸軍機でも地上との連絡のために装備されていた。日本陸軍機を撃墜したアメリカ軍によって鹵獲されてこの信号拳銃は救難信号用と解釈されていたがこれは誤りであるとされる。信号拳銃はドイツ軍でも採用されて使われていたものの、そこは新しい物好きのドイツ軍。この信号拳銃を応用して攻撃用の信号拳銃を作ってしまった。


 2.7cmLeuP(ライヒトピストーレ):
 
 ドイツでも、信号拳銃は本来は伝達のみの機能でしかなかった。ドイツでは2.7cm口径の信号拳銃を1926年に採用していた。作ったのはワルサー社だった。中折れ式のライフリングがない滑腔銃身のものでライヒトピストーレ(軽信号拳銃)として採用された。ちなみに、制式名が2.7cmとあるが、実際の口径は2.656cmだった。戦争前から、比較的大量に生産がされており、開戦前には既に15万丁とも16万丁とも言われる数が使用されていた。いかにドイツ軍が部隊同士の連絡を重要視していたかがわかる。また、戦前は、軽量化のためにジュラルミン製でできたものもあったが、開戦後に航空機の生産が急速に軌道にのり、戦略物資だったジュラルミンは調達が難しくなったために、鉄製にまた舞い戻った。戦争末期になると、大量に調達できていた鉄も貴重になりつつあり、また、戦局悪化で多数の信号拳銃が失われてその補充のためにとにかく大量に作る必要があったため、亜鉛ダイキャスト製の信号拳銃も作られた。早い話が亜鉛の鋳物で強度などないに等しく、用心鉄(引き金の保護金具)などすぐに折れた。この信号拳銃は信号弾専用で、榴弾の発射はするなと通達されていたが、もはや戦局悪化という非常自体ではそうした規定などないに等しかった。実際亜鉛ダイキャスト製の信号拳銃で榴弾を撃っている写真も見うけられた。ともあれ、ドイツ軍では終戦まで用いられたし、東ドイツ軍ではほぼ原型のまま戦後でも生産が継続され、東ドイツ崩壊まで使われていたという。
 この2.7cm信号拳銃使用弾薬は以下のとおり(このほかにもいくつか有りますが代表として)。

 Signalpatrone(信号弾)
 名前のように、光を出して友軍に知らせるための弾。色違いなどで40種類もあった。色は弾にその色の塗装がなされ、また夜間にも区別できるようにリムにギザギザがついていてそれで識別ができるようになっていた。

 Sternbundelpatrone(発煙弾)
 名前のように煙幕を出す。用途は味方の突撃支援などに使った

 Wurfgranatpatrone326(326型高性能炸薬弾)
 信号弾のケース(薬莢)に迫撃砲弾を小型にしたような弾を装填したような弾。ライフリングがないので、弾の後ろに安定翼がある。直径が2.5cm程度なのでたいした威力はないと考えられる。射程も不明。恐らく、威力不足のため、下の361型榴弾が開発されたのだろう。

 Wurfkorper361(361型榴弾)
 卵型手榴弾を弾の先っぽにつけた弾。他の弾と違って、これを撃つ際は前から弾を装填した。装填部は銃口に比べて小型なので、ライナーを事前に信号拳銃の銃身に入れておく必要があり、多少発射に手間取った。有効射程は75mと短いといえば短いが、手で投げるよりは遠くに飛んだし比較的正確に弾が到達したため、部隊内での評判はそれなりに良かったという。ちなみに、信号拳銃で榴弾を飛ばしたのはドイツだけだった。


 2.7cmLeuP42(カンプピストーレZ):

 独ソ戦が始まって広大なロシア平原での戦闘では、不意の遭遇戦が多発した。支援兵器である大砲もその戦場に存在しないこともしばしであったが、ライフル・機関銃火力だけではどうも不足していた。そのために信号拳銃を緊急時の近接支援火器として使えるようにライフリングを施し、より正確に弾が到達するように作られた。これは「2.7cmLeuP42」または「カンプピストーレZ」と呼ばれた。銃身内にライフリングを施しているので既存の信号弾の発射はできなかった。外見上は信号拳銃と全く同じだったため、銃身側面に「Z」と刻印して区別できるようにした。ただ、榴弾だけしか撃てないのもマズいから専用に、ライフリングを施した信号弾が作られるようになった。補給に非常に困ったのではなかろうか?
 使用弾薬の代表例

 Sprenggranatpatrone(高性能炸薬弾)
 名前のように榴弾。口径が2.7cmなので威力のほどは手榴弾以下ないし同等と考えられるが、機銃座を潰すのに威力を発揮したといわれる。

 Nebelpatrone(煙幕弾)
 名前のごとく煙幕開帳時に使う

 Nachrichtenpatrone(通信弾)
 信号弾。直訳すると通信弾頭となるが、信号拳銃の信号弾と同じ。

 Fallschrimleuchtpatrone(パラシュート付き照明弾)
 これも名前と同じ。夜間に付近を照らし出すための弾


 2.7cmStP(シュトゥームピストーレ):

 独ソ戦では重火器を持たない歩兵が戦車を相手に戦闘を行う場面もしばしあった。特にソビエトは戦車生産能力を最大限まで生かして戦車生産を行っていた。実際、戦車乗員の育成が間に合わず、戦車生産工場で働いていた女性を「戦車操縦ができる」という理由で戦場に送り出してもいた。それならまだいい方で、5人乗車の戦車に3人しか乗せていなかった事態もあったほど戦車生産ではドイツに水をあけていた。ドイツ側にしてみれば女性が運転してようが3人しか乗ってなかろうが、戦場における戦車の存在は脅威以外の何物でもなく、また、戦場の各地に対戦車砲が配備されてるわけでもなかったため、とにかく軽便な対戦車兵器を歩兵は欲した。磁石付き地雷やパンツァーファウストなどが代表例だが、ドイツ軍は信号拳銃で対戦車兵器を作ってしまった。それがこのシュトゥームピストーレ(突撃拳銃)だった。構造はといえば、銃身にライナーをかましてそこに銃口から対戦車榴弾を装填して発射するものだった。反動が強いため専用のストックと、またちゃんと照準できるように折りたたみ可能な大型照準器を取りつけた。もはや信号拳銃ではなく武器だといえる。ストックはなかなか使い勝手がよかったが、照準器のほうは仰角20度程度しか照準がつけられなかった。実際には40度ぐらいの仰角をつけて撃ったためあまり役にたたなかったようで、戦場での写真には照準器はつけられていない場合が多い。
 ちなみに、対戦車弾だけでなく、榴弾や信号弾・煙幕弾も用意されていた。榴弾のほうは手榴弾の弾頭がそのまま使われていて、対戦車弾と同じく銃口からねじこんで装填して撃っていた。しかし信号弾や煙幕弾がどういう形状かがわからない。突撃拳銃用に新規に作られたのか、あるいは既存のを(ライナーを除去して)撃てたのかは分からない。

 Panzerwurkorper42(42型対戦車弾)
 名前のように対戦車弾。パンツァーファウストの弾頭をそのまま小型化したような弾。射程距離は不明だが、だいたい70m前後だと推定される。威力のほども不明。小さいのでT-34戦車クラスの戦車は破壊できなかったと思われるが、よくはわからない。

 他にも手榴弾弾頭をつけた榴弾もある。型式名は不明。