M92FS
性能:

全長      217mm
銃身長     125mm
重量      0.97kg
使用弾薬    9mm×19
装弾数        15発





左は自分が持っている
ウエスタンアームズ製の
ガスガンです。
スライドストップがあがって
いるので弾倉にはBB弾が
入っていない事がわかります。
また、グリップは木製の
やつですが、握りここちは
イマイチ(;_;)
元のプラのがよかったかも?
色も合うし
 「デカい弾を食らわせる!」ある意味アメリカらしい拳銃にコルト・ガバメントという拳銃があった。ガバメントとは「官給品」の意味で、正確にはU.S.M1911A1というのが制式名だった。11.43mm口径の初速の遅い拳銃で、マンストッピングでは問題ナシとされた拳銃で、名前のように1911年から80年近くアメリカ兵に「ポケット砲兵」と呼ばれ親しまれた。ただ、戦後になってこのガバメント拳銃に意外な落とし穴があった。戦争中に生産しまくったからか、戦後になっての新規発注は一切行なわれず、部品供給のみ行なわれた。壊れた自力で直すかそれがかなわないときはメーカーに返してオーバーホールさせるか、それでもダメだったら捨てられた。どんなに愛されようがどんなに優れた拳銃だろうがいずれは寿命がくる。あと、世界の趨勢を見てみると、9mm口径の拳銃が軍用でも採用されつつあった。9mm口径の拳銃はたとえアメリカであっても、かなりの数が出回っており、当然弾薬生産も結構な数がなされていた。有事の際には一気に調達ができるという点もあったろう。

 後にM92FSと呼称されるこの拳銃の原型M92は1975年(昭和50年)に発表された。Mは”Model”の略だが、92という数字の由来はよくわからない。開発したベレッタ社の開発通し番号が92だったのだろうか?。このM92は当初はセフティがなかったのか2年後の1977年にスライドにセフティを設けた型が発表された。これはM92Sと呼ばれる。SとはSafetyの略なのだろう。
 1978年に、アメリカでJSSAPという次期制式拳銃のトライアルがあり、このM92Sも提出された。その際にいくつかの改善要項があり、その翌年の1979年にM92SBと命名された型がトライアルに再提出された。その改善要項だけど、恐らく、エキストラクター(薬莢を排除する爪)を可動式にして、弾薬が薬室にあるときにそのエキストラクターをニョキッと出して射手に今装填されていますよ!と警告する仕組みが組みこまれたと思われるが、詳しくはわからない。
 M92SBはアメリカ軍でも高い評価がなされたが、なかなか制式採用はなされなかった。いうまでもなくベレッタ社はイタリアのメーカーであり、アメリカ国内メーカーの反発が大きかったためだった。まぁ主力兵器でもない拳銃だから別に結論は後でも良かったのだろうが、実に6年の歳月が流れていた。その間にアメリカ国内のメーカーはM92SBを超える拳銃を作り上げることはできなかった。性能だけではない、コストをいかに下げるかも問題だった。実際、このトライアルにはスイスのSIG社のSIG P226も参加していたが、性能面ではM92SBに勝っていたものの、コストの面が問題視されて敗れ去った経緯もある。ただSIG P226は安全装置がないなど、銃に安全装置を徹底させるアメリカ向けには適さなかったという理由もあったのかもしれない。
 さて、ようやく1985年(昭和60年)になって、XM9(Xは試作の意味)選定でM92SBが選ばれた。その間にも改良がなされたようで、この頃にはM92SB-Fという名称(FはFinal versionの略)が付けられた。ここに制式にU.S.M9 Pistolが誕生した。正式にはM92SB-Fだけど、この名称は長ったらしいのでM92Fと名前が付けられた。合計約32万丁がアメリカ軍に納入された。ただ使用しているうちに、その何丁かが、スライド脱落事故を起こした。”脱落”といっても、ズリ落ちるのではない。自動拳銃は射撃時にスライドが後方に下がってその時に排莢を行い、ストッパーで下がるのをやめて、その後はスプリングの力でスライドを前進させて次弾装填を行う。このスライドが下がるときに、ストッパーに当たった際、威力が強すぎてストッパーが破損して、そのままスライドが後方に脱落する事をいう。早い話が、スライドが自分の顔面に飛んでくる事故だった。これはハンマーピンを大きくして破損したときでも後方脱落しないように改良がなされ解決した。この型をM92FSという。Sが何の略かはわからないがSafetyの略なのだろうか?。
 ただ、M92FSはアメリカ軍内ではあまりいい評価がなされているとは言えない。デザイン的には秀逸な部類に入るが、肝心の性能はあまりいい評価がない。特に古参の兵士はガバメントがマンストッピング性能が高いとガバメントを愛用している人もいるという。大口径の方が相手をノックアウトさせやすいという理屈ではある。たしかに民間用ではホローポイント弾が使えるから9パラでも威力は十分だが、軍用ではフルメタルジャケット弾しか使えないので、9パラでは突き抜ける可能性があるから、もっともな意見ではある。決定的な点として、命中率が悪い点が指摘されている。ガバメントとM92FSを比較すると明らかにM92FSが命中率が劣るという。M92FSはフレーム(銃の下の方)が軽量化のためにジュラルミンで作られているから重量配分が悪いからだろうか?ただ、フレームがプラスチックのグロック17の命中精度が悪いとは寡聞に聞かないから、個人的な推測でしかない。後にアメリカ軍でM11の名称でシグP228が採用されている点を踏まえても、あまり評価の高い拳銃ではないといえるかもしれない。また、強度の面でもあまり優れているとはいえず、特殊部隊などのオフェンス的使用に耐えられず、わざわざ特殊部隊用にMK23という大型拳銃が作られた。

 M92FSは上で書いたようにフレームがジュラルミンで作られていて、軽量化がなされている。もっとも現在ではH&K社のUSPやグロック社のグロック17のようにフレームが強化プラスチックで作られている拳銃も多い点を考えると、中途半端な感じは否めない。ジュラルミンは軟鉄ほどの強度があり、それで採用されたのだろう。USPやグロック17が1980年代の開発だと考えれば1970年代開発のM92FSとでは同じ土俵で評価するのは酷だと言える。
 M92FSは薬室に弾薬が装填されているとエキストラクターがニョキっと出っ張って射手に弾薬が装填されていることを知らせてくれる。この仕組みは帝政ドイツのルガーP08で採用されていて真新しい仕組みとは言えないが、たしかにこれで安全性は高まるだろう。
 あとの特徴は左利き射手用に、マガジンキャッチ(弾倉止め)が右にも左にも簡単に変えられるという点がある。さすがに、スライドストップは右側面にもってくるのは無理だが、弾を撃ち尽くして弾倉変えしたら、スライドをちょっと引いて離せば装填ができるから、左利き射手にも朗報だろう。
 安全装置はスライドについている。安全装置がフレームについているガバメントと比べた場合、とっさに撃つ時の安全装置解除が、しづらいかなと思えなくはない。「撃つ」のが前提の軍用拳銃なのだから欠点とも思えなくはないが、所詮は飾りだからかまわないのか?。ないし安全第一なのだろうか?。この安全装置はアンビ(左右対象)で右利きでも左利きでも操作が容易にできる。また、この安全装置はスライドを引くときにいい取っ手ともなるので、欠点ばかり先行するとも言いきれない一面はある。この安全装置はONにすると、ハンマーが起きている場合は安全に落とすようになっている。この安全面も利点の1つだろう。
 弾倉はダブルカーラム・シングルフィールドの15発装填。ガバメントが8発だということを考えればこれも利点だろう。