SIG/SAUER P220
性能:

全長       198mm
銃身長      112mm
重量       0.81kg
使用弾薬   9mm×19
装弾数        9
 「スイスという国はどんな国?」と質問されて皆さんはどういうイメージを浮かべるだろうか?。「アルプスの少女ハイジみたいに山地の牧草で酪農を営んでいる」ような情景を思い浮かべる人も多いと思う。実際に間違ってはいない。海に面していないし、農業に適した平地も多いわけではない。実際、国土自体もそう大きい国ではない。特に山岳地域で、気候も暖かいというわけでもないので、酪農しか盛んになれないという事情もあったろう。また、スイスは時計などの小型の工業製品の良さで名高い。交通の要衝という地勢でもないため、商業もあまり期待はできなかったから、工業に走るしかなかったのだろう。
 知らない人も多いがスイスは兵器輸出国でもある。もっとも、戦闘機や戦車などではなく、銃器などの小火器が主体だけども、「兵器輸出額ランキング」で年度別で順位をつけると、たまにTOP10にスイスがめり込んでいる年度もあるぐらいに盛んに行われている。

 スイスの銃器メーカーにSIG社というのがある。SIGとは”schweizerisch - industrie - Gesellschaft”の略で、読みは「シュバイツェリッシュ・インデュストリー・ゲゼルシャフト」、日本語にベタ訳せば「スイス工業社」とでもなるだろうか。
 SIG社ではP210という拳銃を生産して売り出していた。この拳銃は民間用ではあるが、スイス製品らしい精巧な拳銃で、精度もよく評判はそれなりにあった。ただ、精巧に作られていたため値段が高かった。1000ドルを超えたといわれている。軍用として制式を狙いたいSIG社ではこのP210の部品・製作方法を見なおし、プレス加工を多用した安価な拳銃の設計にとりかかった。これで完成したのがP220だった。ただ、新規製作したと言ってもいいほど外観は変わっている。P210が曲線が多い拳銃とすればP220は軍用らしく角張った、ないしゴツい形状の拳銃となった。
 P220は今見ると、特にシングルカーラムの弾倉のため弾が9発しか入らないためにあまりいい評価はなされないが、性能自体はかなりいいので、いくつかの国で採用された。日本でも9mmけん銃として自衛隊で採用されており、国内でライセンス生産されて自衛隊に供給されている。
 性能がいいため、バリエーション展開も豊富になされ、P220の全長をやや小さくしたP225や、P220の弾倉をダブルカーラムにして15発入るようにしたP226、P225を同じくダブルカーラムにしたP228などがある。またアメリカ用に.40S&W弾(10mm口径)が使えるようにP228を改造したP229もある。一番の成功作はP228でアメリカ軍でもM11拳銃として採用されており、各国の特殊部隊でも好んで使われている。P228については別項に譲りたい。


 P220は上で書いたようにシングルカーラム弾倉のためグリップが薄くて持ちやすい。ただ、ダブルカーラムを持ちなれた人の意見だと「薄っぺらく、カードを持っているようだ」という。極端な話ではあろうが、ある意味大きくない人でもちゃんと保持できるという事でもあるかもしれない。自衛隊で採用された理由の1つにこれがあるとも言われている。特に軍用などの場合は片手での射撃が重要になる場合もあるので(片手が負傷したりとか、戦友が負傷した場合に片手でその人を擁護しながら撃つとか)そういう一面もあったのだろうか?
 スライドストップは他の拳銃と違ってグリップ中心部の上にある。これは正直いって使いやすい。ガバメントは手が小さい人が扱うと持ち替えないと上手く操作ができない。
 P220シリーズの最大の特徴はデコッキングレバーがグリップ左側面前に独立してついているという点にある。デコッキングレバーは大抵の拳銃はセフティと兼ねているが、P220シリーズにはセフティがないので、そうせざるを得なかったという面もあるだろうが、意外と使いやすい。手の小さい人は持ち替えないと上手く操作ができないけども、親指でグイッとデコッキングレバーを落とせば、安全にハンマーを落とせる。手動でやる(ハンマーを指で押さえて引きがねを引きながら指でゆっくりと下ろす)事もできるけども、実銃のハンマースプリングは結構固いし、だいいち怖いのであまりしたくはないだろう。
 上で書いたようにP220にはセフティがない。もっともデコッキングレバーを使えば安全に操作できるしハンマーを起こしていない状態だったらほぼ安全とみていいから、それで十分なのか?。軍用の場合は「撃つ」のが前提だからといえばそれまでになるか。たしかに、今ではグロック17など、セフティが存在しない自動拳銃もいくつかある。