ワルサーP38
性能:

全長      215mm
銃身長     125mm
重量      0.94kg
使用弾薬     9mm×19
装弾数        8発
左は自作絵です(^^;)
シチュエーションとかは
気にしないでください
(^^;)


下写真と絵は
ひらだいら へいぺいさん
からいただきました
ほんとありがとさんです
≦(_ _)≧
 銃に疎い人でもこの名前は知っていると思われるぐらいに有名な銃と言える。いうまでもなく「ルパン3世」の主人公が持っている拳銃だからである。「名前だけなら知ってる」のであれば日本一有名な拳銃ではなかろうか?
 第一次世界大戦と第二次世界大戦の中頃まで、ドイツ軍の制式採用拳銃はルガーP08だった。たしかにすばらしい性能をもった拳銃であったが、部品点数が多いので、泥などの汚れを嫌い当然ながら製作工数も多数かかり値段も高かった。平和な時代が続いたならそれでも良かったかもしれないが、時代の流れはそれを許さなかった。
 1933年にドイツでNSDAP(ナチ党)党首のヒトラーが首相に就任。翌年にはヒンデンブルグ大統領の死去によりヒトラーは大統領の職務も兼ねた。さらに翌年の1935年にはドイツで徴兵制の復活を行った。この時点でヒトラーは他国との戦争を考慮した軍備を備える事となった。拳銃も大量の需要があったためルガーP08のような高くデリケートな拳銃ではいけなかったのである。1935年にはドイツ陸軍がワルサー社に対して新しい拳銃の開発要請を行った。ワルサー社の歴史については、ワルサーPPKの所で詳しく述べているのでそこを参照してほしいが、ワルサー社もPPやPPKなどの自動拳銃やまた第一次世界大戦で使われたモデル4拳銃(正式名は不明)などかなりの実績があり、自信をもって開発に挑んだ事だろう。1937年にはワルサーHP(ヘーレス・ピストーレ=軍用拳銃)が完成。軍に提示しこれが翌年に制式採用されP38と命名された。
 P38の最大の特徴はダブルアクションを採用した点にある。今ではダブルアクションは当然であるが、第二次大戦前にダブルアクション拳銃を採用した大国はドイツだけだった(イギリスのようにリボルバー式のはダブルアクションだけどこれは自動拳銃ではない)。ワルサー社は1929年にダブルアクションのPP、これを小さくしたPPKといったダブルアクション拳銃を作っていたため、ワルサー社にとっては当然の機構だったのかもしれないが、これは世界的に見ても実にドイツ軍およびワルサー社は先見の明があったと言えよう。
 ワルサーP38は製造コストはルガーP08の半分以下で、しかも過酷な戦場でも確実に作動するので兵士からも好評であったという。制式採用された翌年(1939年)9月1日にはドイツはポーランドと交戦状態に入り、ポーランドと同盟を結んでいたイギリス・フランスが2日後にドイツに宣戦布告。ここに第二次世界大戦が始まった。拳銃の需要は急速に多くなり、ワルサー社だけではとても需要にこたえる事ができなかった。そこでモーゼルやシュプールヴェルケなどでも生産が行われた。大抵の銃は刻印を見ればどこで生産されているかがわかるけども、戦争中という事もあって暗号での刻印がされており、識別が難しくなっている。戦争が更に激しく、またドイツに不利になってくると、兵器の消耗が激しく、他国のベルギーの銃器会社FN社でも生産が行われた。しかしスライドなどの部品のみで完成品の生産は行われなかったようである。また第二次世界大戦末期になってくると、各部品の省力化が行われて少しでも生産数を上げる努力が行われたものの、結果的に改悪でしかなかった。特に、ワルサーP38はバレルとスライドの固定を独立したロッキング・ラグで行うけども、これを省略したタイプもあった。結果的に発射の際にスライド脱落の危険が伴った。

ホールドオープン状態のP1クルツ。
「なんでホールドオープンなのにトリガーが前にあるんだ?」
「なんで服を脱いでいるんだ?」
という質問は受け付けません(謎)
 1945年5月7日。ドイツ敗北。同時にすべての兵器生産を禁止される事となり、当然ながらワルサーP38の生命も終わりを告げた。と思われた。戦後しばらくしてワルサー社は西ドイツのウルムに再建され、1956年に(1957年とする資料もある)軍用にP38を仮の名前でP1と名づけて(恐らく再建第1作目の拳銃だからその名がついたのだろう)制式拳銃トライアルに提出した。ほとんどP38と同様のしくみで刻印やグリップの滑り止めが横縞からチェッカリングになった程度の違いでしかなかったものの、ドイツ連邦軍(西ドイツ軍)に制式採用され、仮の名前のP1がそのまま正式名となった。今のドイツ連邦軍ではH&K社のUSPがP8の名前で採用されているものの、その更新はつい最近の事である。

 ワルサーP38の構造としては上で述べたように自動拳銃でのダブルアクション機構を軍用制式採用拳銃としては初めて採用している。これは今では大抵の国がダブルアクション拳銃を採用しているものの、ワルサーP38特有のしくみがある。それは薬室に弾が入っているというのを射手に知らせる機構で、それだけならM92FSも採用しているけども、ワルサーP38は細長い棒を薬室からハンマー部分まで組み込んで、薬室に弾が入っていると、この細長い棒がニョキンと出っ張る。この方式はワルサーPPから世襲されたものだが、他社ではこのようなしくみで装填を射手に知らせるような機構はない。恐らく、作る手間がかかるのだろう。
 構造的に銃の前方が軽いので射撃時に銃口が上へジャンプする傾向がある。ただし銃口部が軽いという事は同時にずっと照準してても、疲れないという利点もある。また、ショートリコイルが水平におこるので(ガバメント等のショートリコイルはロッキング・ラグの構造上、銃口がやや上を向く)それとあいまって初弾の命中精度はいい。
 あと、欠点といえるか分からないけども、マガジンチェンジの際に普通の銃器はマガジンリリースボタンがあってそれを押すとマガジンが脱落するけども、ワルサーP38はグリップ下にマガジンを支えるような感じのマガジンキャッチがありそこを引いてマガジンを抜く。確かに射撃時に脱落しないという利点があるものの交換がしにくいと思う。「思う」ではなく、実際しにくい。しかし、この構造が改良された形跡はないので問題がなかったんだろうか?

 バリエーションとしては、銃身を切り詰めた「P38K」と呼ばれるクルツタイプが存在する。西ドイツ軍型”P1”でも同じタイプが存在したので(右写真)、組織的に作られていたのは間違いないのだが、どういった経緯でどういった目的で作られたのかは判然としない。俗に「ゲシュタポモデル」とも呼ばれている。ゲシュタポなどの特殊な人が使うために作られたともいわれている。しかし、この名称は戦後になってマニアがつけた名前で、戦中の資料では「P.38 mit kurzemlauf」や「Verkurzte P.38」などが散見される。早い話が「P38K」という名称ですらなかった。しかも、ゲシュタポは軍隊じゃないから、それならモーゼルHscやワルサーPPKなどを使えばよさそうなものだろう。戦争中だから量産されてる「P38」を使え、などのお約束はないはずで、だいいちアメリカ映画のSWATみたいに、出向くたんびに銃撃戦を展開していたわけもないから威力よりもコンパクトさを重視しただろう。実際のところはよく分からない。そもそも当時の記録写真を見てもこのクルツタイプのP38を見かける事はまずない。P1型のクルツが作られた理由としては、PPKなどの威力がない拳銃を使っていた西ドイツ(当時)の警察が市民に威圧感を与えないようにという配慮から作られ配備されたとされる。どうせ警察用の拳銃は「撃たない」のが前提だから、銃身切り詰めても問題はなかったんだろう。ただ、応急的な措置だというのは警察側も認めていたようで、特に1972年のミュンヘン・オリンピック村事件以降「何がなんでも威力がある9パラの拳銃を!」という要望から何社かにトライアルをさせて、結果H&K社のP7が要求をクリアした。このトライアルに参加したワルサー社はP5という拳銃を提案した。P1クルツ型とさほど外見上で大差がないもので、たしかにコンパクトだった事もあり、採用がなされたのだが、射撃時のバランスが悪いという点が指摘され、殆ど使われる事はなかった。以上、話がうんと脱線してしまいました(;_;)
(以上のP1クルツ情報は、ひらだいら へいぺい さんと  くりんこふ さんと 矢野 さんから情報をいただきました。ほんとありがとうございます≦(_ _)≧)
無論、P38Kの生産理由はこれには全く当てはまらない。こればかりは後々の研究を待つほかないだろう。