H&K P8(USP)
性能:

全長        195mm
銃身長       105mm
重量        0.81kg
使用弾薬    9mm×19
装弾数        15


左は自作絵です。
下は元祖やうせい堂のNAKさん作画のCGです

 何度か書いているが、軍隊における拳銃の存在はあまり重要ではない。使用用途といえば戦車乗員などの護身用や将校用で、「飾り」「腰の錘(おもり)」などとも揶揄される。
 ドイツでは1990年代までワルサーP1という拳銃が軍用拳銃として採用されていた。元の名はワルサーP38で名前のように第二次大戦の前から使われていた拳銃だった。ただ、1990年代になると、戦争も、通常の正規戦から、ゲリラやテロリストなどを相手とした不正規戦を視野に入れる必要があり、拳銃の重要性も高くなりつつあった。拳銃は扱いが難しい(銃弾を命中させるのが難しい)が訓練を重ねれば50mでも命中させられるし、実際にIPSC競技では当たり前のように命中させてもいる。不正規戦、特にテロリストを相手にした戦いだとこの射程距離は十分以上といえ、拳銃はコンパクトだから扱いをマスターすればこれ以上頼もしい存在はないだろう。また、いくら名銃とはいえ第二次大戦前のデザインでは古めかしいという事情もあったろう。

 P8の原型のUSPは1990年代初頭に開発が開始されている。USPとは”ユニバーサル・セルフローディング・ピストル”の略称でベタ訳せば「国際的自動拳銃」となる。中国の銃器雑誌ではこう書かれているのだろうかしら?。同時期にSOCOM拳銃(後にMk23と命名される拳銃)の開発を行っており、ソーコム拳銃を小型化したような形になっている。資料によってはUSPの大型化がソーコム拳銃であるとも書かれており、どちらが先に開発されたかは判然としない。同時進行していたのだろうか?。USPは構造的にはオーソドックスな自動拳銃で、P7やVP70といったユニークな製品を出しつづけていたH&K社にとっては意外な構造とも言えなくはない。もっともそのユニークさゆえにか拳銃部門ではあまりパッとしていなかったからその巻き返しの意味もあったのかもしれない。
 このUSPはドイツ軍にP8として採用された。ただ、USPからP8になった時点で改修された点がある。それはセフティで、USPのセフティは銃左側面後ろのフレーム側についているが、このセフティレバーを親指で跳ね上げてセフティオン、下ろせばオフとなる。さらに落とすとデコッキングされる仕組みになっている。これがP8では逆になっていて、下げればセフティオンでさらに下げるとデコッキングされる。デコッキングされたら自動的にセフティオンの位置になる。これは既存のP1(ワルサーP38)と操作性を合わせるためにこうしたといわれているが、実際のところ、とっさに撃つ場合にはUSP方式のほうが撃ちやすい。どうせP1とP8ではセフティレバーの位置がぜんぜん違うのだから、改修する必要などないのではないかと思えるのだが、どうだろうか?。
 今の所、ドイツ軍のみが軍用としては制式採用している。性能の良さから各国の特殊部隊でもいくつか採用例があるようで、日本の警視庁のSAT(警察特殊急襲部隊)でも採用されている。実際に公開された訓練映像でSAT隊員が使用しているシーンがある。


 USPはフレームが強化プラスチックでできている。さすがにスライドは強度を持たせる必要があるので、スチール製で、フレームも内側にスチールの補強が入っている。
 弾倉もプラ製である。そのため弾倉の重さは55gとやけに軽い。弾倉をプラスチックにしている理由としては給弾不良をおこさせないようにという理由。当然ながら、プラスチックは鉄よりも脆いけども、鉄の場合は強い衝撃で壊れないにしても曲がる可能性がある。たとえば内側に曲がってしまった鉄の弾倉は弾の移動を阻害するためにもう使えない。プラスチックは割れてしまうかもしれないが、鉄が曲がる程度の力が加わってもこの弾倉は割れはしない。また、プラスチックは透明にもできるから残弾確認が容易だし、だいいち軽いので、実際に持ち運ぶ人にとっては嬉しい限りといえる。プラ製のため、弾倉が軽いからか、グリップ下にへこみをつけていて、弾倉がマガジンキャッチを押しても落ちないときなんかに備えている。ちなみに、このへこみは兄弟拳銃のMk23にはない。
 バレルはH&Kが得意とするポリゴナルバレルを採用している。ポリゴナルバレルとは簡単にいえば6角形をした銃身である。利点は銃身寿命が延びるという事である。欠点は製造が難しく、普通の人がイメージするバレル(エンフィールド型バレル)は普通に穴をあけて刃(やいば)で銃身を回転させながらバレルを作っていくけども、ポリゴナルバレルはこの方法では作れない。作り方は、6角形のカタに平板鉄板を巻きつけて外側からひっぱたいて作る。この方法なら薬室まで一気に作れる利点を持つ。ただ、ひっぱたくといってもキッチリひっぱたかないと精度が出ないのは無論だが、NC工作機械(NC=数値制御)の発達で熟練工員が加工するよりも精度の高い製品が作れるようになった。ポリゴナルバレルでなくとも、今の銃器の発達は工作機械の発達なくしてありえない。このポリゴナルバレルはH&K社の説明では命中精度の向上と銃身寿命の延長」が謡われているが、実際のユーザーの評判では既存のエンフィールド型と比べても命中精度も銃身寿命も大差がないという。
 マガジンキャッチは通常の銃器のグリップ左側面前方にあるには違いないが、トリガーガードの付け根にある。これは左右両方から操作できるので実に便利である。ただし、これによって通常の拳銃よりは遠い位置になったので小柄な手の人は操作がやりづらいとも思えるが、実際には人差し指でも操作ができるから、案外使いやすい。
 USP、P8ともに発射時の反動を抑えるために、2重スプリングを採用している。スライド後退時に完全に下がる少し前になるとメインスプリングとは別の小さいスプリングが作動して反動を抑えるようになっている。実際、これで反動が3割ほど抑えられたという。
 欠点を挙げるとすれば、USP・P8ともに分解方法はガバメントと同じで、スライドを少しズラしてスライドストップ銃右側面からを銃弾なんかで押してから、手で引きぬいて行う。リコイルスプリングが柔らかいエアガンならともかく、リコイルスプリングがやたらとカタい実銃では大変な作業といえる。脱落しにくいようにという考えだろうが、もちっとなんとかならなかったのだろうか?。あと些細な点だが、弾倉を装填する際に、ギュッと握った状態で行うと、マガジンキャッチとグリップの間で中指を挟む事もある。ほんとに些細な点だがちょこっと痛い(笑)。