PM(マカロフ)
性能:

全長      161mm
銃身長      94mm
重量      0.73kg
使用弾薬     9mm×18
装弾数        8発





左の写真は町田玲彦さんから
資料提供していただきました
どうもありがとうございます
≦(_ _)≧
 ソビエト軍というのは第二次大戦で結果的に勝利をおさめた国だった。相手のドイツ軍が西にも東にも敵を抱えていたという幸運もあったろうけども、文字通りのケタ違いの損害を出しても、結果的にベルリンを占領した。ソビエト軍というのは、「パック・フロント」(対戦車砲による防御陣地)などに代表されるように陣地構築などの防御戦術が得意というイメージがあるが、兵器体系は攻撃重視だった。「護りだけでなんになるか。追い返せないと勝ちもねぇんだ!。」そんな論理なのだろう。
 そのため、ソビエト軍は一部的ながら、自動ライフルの実戦配備がなされており、ノモンハン事件でも日本軍相手に活躍した。日本の公刊戦史にも、その活躍のほどが書かれている個所もある。攻撃力重視のため、防御的性格の強かった拳銃はどうしても開発がおざなりになるというのは仕方がないところで、帝政ロシア時代から使われていたリボルバー式のナガンリボルバーも第二次大戦時においても立派に現役だった。このナガンリボルバーは改良すらされず、軍に供給されつづけた。また、この後継のトカレフTT1933も広く使われてはいたが、ソビエト狙撃兵師団(ソビエトでは歩兵を狙撃兵と呼んだ)での歩兵中隊の拳銃の定数は9丁と各国に比べて極端に少なかった(ドイツでは1個中隊あたり22丁が定数だった)。日本と違って工業力がなくて作れなかったというものではなく、やはり威力がない・命中率が悪い拳銃が戦場で何の役にたとうか。実際、砲兵あたりでも、ライフル背負って発射準備をしている写真も見受けられるので、小さい拳銃ではなく、ライフルを装備させていたのだろうか。また、第二次大戦のソビエト軍はPPSh1941という最高傑作の短機関銃があったからそれで代用できたのかもしれない。

 戦後になって、ソビエト軍は弾薬の改定を行った。一般に知られるのはAK47というライフルで、これは今まで使っていた7.62mm×54R弾から7.62mm×39弾に移行したものだけど、拳銃の弾薬も必要以上に威力があったトカレフTT1933の7.62mm×25弾から9mm×18弾に変更を行った。威力は3分の2ほどになったけども、その分反動を軽減できて、銃自体も小型化できた。
 俗にマカロフと呼ばれるこの拳銃は制式名は「PM」。”ピストレット・マカロバ”(マカロフ式拳銃)というこの拳銃は、戦後まもなくソビエト軍用に開発された拳銃。外見がワルサーPPに似ているためこれを参考にしたと考えられなくはないが、似たようなコンセプトで作れば同じになってしまうのか?。
 作動方法はブローバック式とオーソドックスな作動方法で、拳銃左側面にセフティとスライドストップと特に見るべき点はない。弾倉交換は一般的なグリップ左前ではなくグリップ下を操作して交換する。弾倉が脱落しにくいという利点があるが、交換しにくいので問題アリと思えるのだが、どうせ、この拳銃を持っている人(将校など)が弾倉交換しなきゃいけないまでに銃撃戦を展開したらもはやその部隊はおしまいなのだからそれでもいいのか?
 1951年に制式採用され、軍用は当然として警察でも広く使われた。ただ、上で書いたようにソビエト軍はあまり拳銃を熱心には開発しておらず、特殊任務以外の拳銃はソビエト崩壊まで、いや今でもこれ一本で通している。性能が良かったという理由だけではなく、拳銃なんていう補助的兵器なんざどうでもいいって感じだったのだろう。

 マカロフは言うまでもなく、西側諸国の民間市場にに出まわることは、まずなかったが、1990年になって、冷戦崩壊とソビエトの崩壊により、特に外貨獲得を目的にロシアから大量にアメリカに輸出されるようになった。そのため、アメリカ国内でも容易に入手が可能となった。弾薬はマカロフ弾(9mm×18弾)では、SIG P230と同じ弾薬が使えそうな気がするが、弾の直径が若干マカロフ弾のほうが大きいため互換性は全くない(9mmKurzの弾頭は.355インチ。マカロフ弾は.364インチ)。しかし、弾薬も大量に輸出されているので、弾薬がないから撃てない!という自体はないという。弾があまり入らないという欠点はあるが、威力の面でいえば.380ACPよりも若干上だし、銃自体がコンパクトのためあまりかわばらず、さほど突起物もないのでホルスターからも抜きやすい。そのためか、アメリカでの評判はそれなりにいいと言われている。

 余談ながら、ソビエト時代、このマカロフ拳銃は特別仕上げにした型も存在し、外国VIPのお土産用として配られていたという話もある。純金メッキのPPKを蒋介石総統にプレゼントした(第二次大戦前、中国はドイツの武器におけるいいお客様だった)ワルサー社と似たような感じだが、国を問わずして、人間の考える事は皆同じなのだろうか?