62式機関銃
種類:多用途機関銃

性能:

全長        1200mm
銃身長       524mm
重量        10.7kg
使用弾薬   7.62mm×51
装弾数        
        (ベルト給弾式)
初速        830m/s
       (弱装弾では730m/s)
発射速度    650発/分
持続発射速度  80発/分

 昭和20年8月。日本敗戦。翌9月からはアメリカ軍が日本に進駐して日本は完全にアメリカの統治下に置かれた。日本は軍事力の配備を全て否定されていたが、世界情勢はそれを許さなかった。昭和25年6月の朝鮮戦争で、日本は戦場(朝鮮半島)の後方基地となり、また進駐していたアメリカ軍の多くが朝鮮半島に送られたために日本は独自の軍事力を持つ必要性が生じた。ただ、あくまでも建前的に軍隊と認めたがらなかった日本政府は「警察予備隊」と呼称した。後の自衛隊である。

 自衛隊では当初はアメリカ軍の兵器で武装していた。ただ当初は定数が揃わず、日本軍の99式小銃がつかわれてもしていたが、後にアメリカ製に統一された。しかし、一旦日本に他国の侵入を許して戦争になった場合、いくらアメリカが同盟国とはいえ、すごい距離があるから武器供給が間に合わない自体にもなりかねなかったろうし、第一日本はサンフランシスコ条約で国際的にも独立を認められたし、だいいちかつてはアメリカとも戦った軍事大国でもあった。自国の護りは自国の兵器で。という意地もあったろう

 陸戦の主力兵器の1つと言える機関銃の採用に関しては、92式重機関銃の採用も検討されたと言われている。理由は、その命中精度の高さにあったとされる。日本陸軍の射撃試験では99式小銃との命中率の差がほとんど出なかったという。戦場におけるライフルの命中精度は急落する。理由は射撃訓練の時は向こうが撃ち返してくるなんてまかり間違ってもないけど、戦場では敵は当然撃ち返してくる。銃弾だけではない。手榴弾やら大口径砲弾やらありとあらゆる兵器がこっちに向かってくるのである。死の恐怖に怯えながらの射撃では平時の命中精度など期待できるはずもなかった。機関銃でも同様だけども、機関銃の射撃は後方からが多いし、両手と肩のみで構えるライフルと違って、92式重機関銃はガッチリとした3脚で固定して撃つために戦時と平時の差はほとんどでなかった。そのため、日本軍と対峙したアメリカ軍の精鋭、アメリカ海兵隊でさえもその射撃音を聞いただけで逃げ出したという話がある。ただ、92式重機関銃は3脚を含めた総重量が50kgを超えており持ち運ぶには不便きわまりなかった。言うまでも無く兵器というのは戦場にもっていって初めて真価を発揮するものであり、さらに、兵器は戦う時間よりも持ち運ぶ時間のほうが多い。そのために重たすぎる機関銃の採用は見送られる事になった。

 昭和31年に防衛庁は住友重機械工業に自衛隊用の機関銃の開発を依頼した。当初は自衛隊制式ライフルのM1ガーランドライフルと弾を合わせるために.30-06(7.62mm×63弾)を使うように指示されたが、昭和33年頃にアメリカが.308ウィンチェスター(7.62mm×51弾)に制式弾を制定したために、この開発機関銃もそれに合わせるようになった。昭和33年には完成し、その試作機関銃は日特14型と呼ばれた。この名前の意味はよく分からない。昭和35年にはさらに改良された日特15型という試作品が完成し、防衛庁でいろいろな試験が行われた。

 昭和37年2月15日。この機関銃は「62式7.62mm機関銃」として制式採用された。余談ながら、肝心の歩兵用ライフルは国産品か輸入かの結論が出た頃で、まだM1ガーランドライフルのままだった。つまり機関銃よりも歩兵用ライフルのほうが威力あるし射程も長いという奇妙な自体が起こった。

 62式機関銃の評価はあまりよくはない。自衛隊員の多くが嘆くのが「故障しやすい」点だという。すぐに作動不良をおこし、撃つ時間よりも直す時間のほうがかかるという話もある。評価は散々なのに改良すらされておらず今でも継続使用されている。
 しかし、調子がすんごくいい時の62式機関銃はかなり精度もよく撃ちやすい機関銃だとも言われる。その利点のみがお上に聞き入れられたのか62式機関銃は発射速度を倍にして改良された74式車載機関銃という派生型がある。この機関銃もそれなりに汎用性があって、74式戦車以降の自衛隊の戦闘車両には大抵装備されている。個人的にはこのまま国産でいって欲しいと願っている・・・。


↑62式機関銃の試作品2種類。上が昭和31年頃の試作品で下が昭和35年頃の試作品。
昭和31年の試作品は消炎器や照門の転輪など、99式軽機の影響を見て取れる。
銃床がライフルのようになっているが、理由は不明。
昭和35年試作品はだいぶ62式機関銃に似てきたが、それでも細部は異なる。
見て分かるように2脚を前に折りたたむようになっている。理由は分からない。
 62式機関銃はオーソドックスなガス圧作動方式を採用している。銃身下にあけられた小穴からガスが出て、ピストンを押してボルトを後退させる。このピストンにはガスかきがあって、ようは発射時のカスが溜まってピストンが動かないようになるのを防止するためのもの。無論だが、通常は訓練が終わったらきちんと掃除されるのは無論である。

 銃身は、機関銃だけあってかなり肉厚に作られており、放熱フィンも装備されている。この放熱フィンは防衛庁の発表では微風でも冷却効果はかなりあると宣伝されている。持続発射速度は80発/分でこの数値は64式小銃の8倍である。機関銃だから当然の数値とも言えるが、それだけ堅固な銃身だといえる。そのために銃身はそれだけで2kgも重量がある。銃身は銃身後尾と機関部がガッチリと固定されてはいるが、固定する環を取れば即座に銃身交換が行える。銃把(銃を持つ取っ手)が銃身とくっついているために、焼けた銃身で手をやけどする心配はない。ちなみに、一応、耐熱手袋が1丁あたり1組用意されてはいる。銃身先端には消炎器がついているが、これは取り外しが簡単にできる。もしかしたら、スペアの銃身には消炎器がついておらず、銃身交換の際には消炎器を移し替えないといけないのかもしれない。

 照準器はアメリカのBARと似たようなものがついている。起こすと300m〜1200mの調整可能なサイト。倒すと100mほどの照準となる。普段は、出っ張るのと破損防止のために倒されていて戦闘時に起こすようにはなっているが、緊急時には倒したままで射撃するように教育がなされている。サイトの照準最大射程は1200mまでしかない。これは案外射程が短く感じるがどうせ人間相手なら500mを超えたあたりから狙うのが不可能になるから、これでもいいのだろう。ただ、重機関銃的な使用も要求されている62式機関銃だから困る面もある。そこで用意されているのが、直接照準眼鏡でようは機関銃用のスコープ。倍率はわからないが、スコープがあればかなりの遠距離まで射撃は可能で、超過射撃(味方を超えた射撃。空を狙って山なり弾道にして斜め上から敵兵に銃弾をそそぐ)も可能になっている。さらに62式機関銃には潜望照準眼鏡も用意されている。名前の由来は潜水艦の潜望鏡みたいに、銃本体からかなり上にレンズがあってそこから敵兵を伺うようになっている。実際の所、そこまでの必要はないだろう。

 上で書いたように62式機関銃は重機関銃的な使い方もするので3脚も用意されている。「用意」とはいうが、実際に新規開発はされておらず、今まで自衛隊が使っていたM1919機関銃の3脚がそのまま使用可能になっている。

 62式機関銃の付属品は以下の通り。

 工具類(以下の部品が工具袋に入っている)
・特殊レンチ
・小さいドライバー
・規整子ハンドル(これでガス流量を調節して発射速度を変更できる)

 付属品(以下の部品が付属品袋に入っている)
・さく杖(銃身を掃除する棒。何本かに分割されていて繋いで使う)
・銃身内部手入れブラシ(上のさく杖と繋いで使う)
・薬室手入れブラシ
・耐熱手袋
・照尺(対空照尺?)
・規整子
・ガス筒手入れブラシ。大きいのと小さいの1こずつ

 予備品(以下の部品が予備品袋に入っている)
・銃身×1
・撃針×2
・撃針止軸×2
・抽筒子(薬莢を排出する時につかう引っ掛け部品)×2
・抽筒子バネ×4
・複座バネ×1
・スナップリング×5
・スナップピン×10

 上記は62式機関銃1丁あたりにこの部品がついてくる。この他にもスリング(負いヒモ)、機関銃カバー(布製)、銃弾袋(布製)、取扱説明書、火器原簿が1つずつ付いてくる。

 他にも部隊整備用部品として、
・装弾器
・洗矢
・毛洗頭(洗矢と足して銃身掃除をする部品)
・薬莢抜き
・ニッパー
・62式機関銃用の特殊工具セット(かなり細かい分解を行なう際に使う)
・ゲージキット(細かい分解をして組みたてた際の調整用)

 がある。ちなみに、これは62式機関銃の採用当時は1個小隊あたり1つが用意されていたが、現在では分隊用機関銃にミニミ軽機関銃が採用されたこともあり、1個中隊に1セットが用意されているのではないかと想像される。実際の所はわからない。