MP5
性能:
(下記データはMP5A3のもの)
全長      490mm
(ストック延長時680mm)
銃身長     225mm
重量      2.88kg
使用弾薬     9mm×19
装弾数        30発
連射速度   800発/分







左は東京マルイ製の
電動ガン"MP5A5"です。










撮影協力
ホビーショップコスモ
 ドイツのH&K社は1949年に創設された。戦後まもなくの新鋭銃器会社であったのだが、その名前のようにヘッケラー氏とコック氏の合弁企業だけど、両者とも元々はモーゼル社の技師だった。ようは失業してあたらに会社を起こしたのだ。1960年代初頭、H&K社はドイツ軍制式採用ライフルのG3を生産していた。そのノウハウを活かして、拳銃弾仕様に小型化したサブマシンガンを開発した
(ドイツではサブマシンガン(短機関銃)ではなくマシーネンピストーレ(機関拳銃)と一貫して通しているけども、ここではサブマシンガンという名称で統一します)
 このサブマシンガンはG3と同様にローラーロッキング閉鎖機構をもち、内臓ハンマーで発射するというまさにライフルをサブマシンガンにしたようなものであった。実際、軍用サブマシンガンでここまで凝ったのはあまりなく、トミーガンの初期タイプはは一応はボルトと撃針が独立していたものの、ボルト閉鎖機構はなかった。トミーガンが後に完全なオープンボルト式になったように、サブマシンガンは命中精度には目をつぶりあえてバラマキ専用の銃器でしかなかった。そんななかでのこの閉鎖機構付きサブマシンガンの開発は良くいえば画期的、悪く言えば無謀だった。その凝った装置の分だけ値段が上がるからである。命中精度が高いとはいえ威力のない銃器を、大量に配備する必要がある軍用に欲しがるとはとても思えないのだ。
 後にMP5という名称で知られる事になるこのサブマシンガンは西ドイツ(当時)でトライアルを受けたものの、イスラエルのUZIに敗れた。理由としては値段が高いのが上げられたものの、一番の理由は政治的背景であったとされる。しかし値段が高いには違いはなく、今なお正規軍用としては採用されるにはいたっていない。ドイツは1990年代まで自動ライフルを装備していたので、サブマシンガンはドイツ軍内部としてはまだ採用の余地があった。西側各国も1980年代までは同じように反動の強い自動ライフルではあったのでまだサブマシンガンは実用にあったといえる。しかしMP5は他の安いサブマシンガンに押されていき、しかも、突撃ライフルが開発されると、そのショート化が簡単になったので(大口径の装薬の強い銃だと、銃身が短くできないが、小口径の装薬の弱い銃だと銃身を結構短くできるようになった)、余計にサブマシンガンの必要性はなくなった。と思われた。
 H&K社は1966年にMP5の名称をつけて販売を開始した。しかし、軍用としては売れなかったものの警察関係からは相当に注目された。アメリカのSWAT(スペシャル・ウェポンズ・アンド・タクティクス=特殊火器戦術部隊)は発足当時はM16A1を使用していた。言うまでもなく軍用の突撃ライフルだった。自動ライフルよりは威力は劣ったとはいえ、それでも必要以上に威力はあった。SWATに限っていえば狙撃隊でさえどんなに離れても100m以上離れて対峙する事はなく、当然突入部隊はなおさら距離は短かった。つまり拳銃弾でも良かったのである。FBIの調べでは犯人との銃撃戦は平均7m程度の距離で行われているとの調査結果もある。極端な話だが、警察関係で使う場合はサブマシンガンでも充分なのである。突撃ライフル弾は威力があるので、犯人に命中させても貫通して民間人に食らわせる可能性もある。拳銃弾ならよほど近距離で撃たない限りは貫通はしない。サブマシンガンの弱点でもあった命中精度の低さもMP5のクローズドボルトならば克服されている。SWATはMP5を選択する事となったのである。また、正規の軍隊では敬遠されていたものの、特殊部隊でも採用された。同様の理由である。特殊部隊は野戦に投入されることはほとんどなく大抵は敵後方で活動するし、室内や近距離での戦闘が多いので射程も必要はなかった。バックアップの拳銃と同一の弾が使用できるのも強みだった。
 また、1970年代になってくると、テロリストによる旅客機のハイジャックが盛んに行われるようになった。今現在、飛行機に乗るときに厳しいボディチェックを受けるのはその名残りであるのだが、テロリストに乗っ取られた旅客機に突入する、特殊部隊員にもMP5は歓迎を持って迎えられたのだった。サブマシンガンである以上は射程が短く威力がないけどもMP5は命中精度が高い・人間工学的に考えられたデザインで操作も容易・軽量・・・となれば、当然の理とも言える。その後ハイジャックはあまり行われなくなっていったが、これは特殊部隊の活躍とMP5の優秀さがあったからと言っても過言ではないだろう。
 ともあれMP5はH&Kの大ヒット商品であり、当然今でも生産は継続され、各警察や特殊部隊にこぞって採用されている。

 MP5は大ヒットしたため当然バリエーションは多い。
 1966年に発売されたのはMP5とMP5A1の2種類だった。MP5は固定ストックでMP5A1は伸縮式のストックだった。ドイツの国境警備隊の写真なんかでは固定ストックを装備しているのを良く見かけるけども、特殊部隊やSWATなど室内戦が多い部署には伸縮式のストックが好まれただろう。1970年に少し改良が加えられMP5はMP5A2に、MP5A1はMP5A3と名前を変えてリニューアルされた。どのような改良が加えられたかは分からないです(涙)。
 1975年には減音器がつけられたSDタイプが加わった。SDタイプは3種類ある。MP5SD1はストックがついていない。減音器をつけると10センチ長くなるのでそうしたのだろうか?MP5SD2は固定ストックタイプ。MP5SD3は伸縮式のストックだった。3種類とも今でも売られているようだが、ストック無しタイプは実際に配備されている特殊部隊関係の写真で確認できるのはまずなく、ストックがないのは単純に実用性がないのだろう。この減音器付きのMP5は、西ドイツのGSG9あたりからの要望で作られたと言われている。普通の人は”サイレンサー”(消音器)と呼ぶけども実際には音は消えない。単純に音量が下がるだけである。しかし、それでも効果は高い。銃器の性質上、室内で用いられる事が多く音響がこだまして銃器の発射音がかなりやかましくなる。減音器をつけると70デシベル程度(会社の事務所のやややかましい所程度)なので、これなら、さほどやかましくはない。大声の会話と同じ程度だからである。また、突入時に射撃音が小さいと犯人が突入場所を誤認する効果もあると言われている。実際の減音効果はこれは実際に聞き比べると分かるけど、普通の射撃音は「パ〜〜ン」と「あ!銃声だ!」と思うけど、減音器をつけると「パン」と、音が響かないので、「ん?何か音がしたな?」と思うくらいに違ってくる。だた、フルオート時はボルトの前後する音が結構やかましく、発射音というよりは「ガシャガシャ」といった音の方がかえってうるさいぐらいである。MP5のSDタイプはさらに減音効果をあげるために銃弾の初速を音速以下にして(音速を超えると銃弾周りに衝撃波が発生し、減音効果が少なくなるからである。多くの銃は特殊な弾(銃弾を重くする)を使う方式をとっているけども、SDタイプはバレルを短くして音速以下にしている。欠点としては80ヤードあたりの距離になってくると結構弾道がダレてくるものの、減音効果はなかなかに効果がある。
 翌年の1976年にはMP5を切り詰めたMP5Kが発表された。詳細は別に設けているのでそこを参考にしてほしい。
 さらに翌年の1977年には直線弾倉を給弾をスムーズにするために湾曲弾倉(バナナマガジン)にした。ぐんと進んで1989年には全ての機種がリニューアルされる事になる。特徴は機関部外側(レシーバー)が一新されセレクターは左側面オンリーだったのが、アンビタイプとなった。ようは左右両方から操作できるようになった。またハンドガードがチェッカリング入りのがM16A1のようにオニギリ型となった。グリップが手の指に合わせて波打っていたものの、ストレートになった。最大の特徴は3点バースト装置が追加になった。これはムダ弾を撃たないようにとの措置だろうけども実際には機械的に複雑になるようで、この3点バーストはあまり好まれないようで、今の生産タイプでは3点バーストを除いたのもある。たしかに、MP5を使う部署はそれなりに訓練を受けるので、指きりの3点バースト(3発撃ったら引きがねを戻す)でも十分なのだろうか。この対応表を表すなら
旧型

新型
簡単な解説
MP5A2
MP5A4
ストック固定タイプ
MP5A3
MP5A5
ストック伸縮式タイプ
MP5SD1
MP5SD4
減音器付きストック無し
MP5SD2
MP5SD5
減音器付きストック固定
MP5SD3
MP5SD6
減音器付きストック伸縮

 となる。旧型は今でも生産されているかは分からないけども、旧型レシーバーを好む人も少なくなく、「現行タイプのアンビセフティは右手の指に干渉していけねぇ。旧型も捨てたもんじゃないけどねぇ」という意見もある。
 MP5は多くの国で採用されているので、写真も非常に多いけども、その中にはレシーバーが新型で、グリップとハンドガードが旧型のMP5が写っているのがある。しかも弾倉が直線(^^;)。なんなんでしょうね。これって。(^^;)使っている人が個人でイジっているんでしょうか?
 日本でもご多分に漏れず、SATなどの警察特殊部隊で採用されている。上でメカ的に複雑だから敬遠されるとされた3点バーストもちゃんとはいっている。無論その機構だけ金がかさむが、どうせ国家の金で払われるんだから構わなねぇと警察官僚だからゴージャスなやつを選んだんだろうか?

ともあれ、優れたサブマシンガンに違いはなく、これからも各国で使われていく事だろう。


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