MLRS
全長:        7.00m
車体長:       7.00m
全幅:        3.00m
全高:        2.60m
重量:         25.0t
装甲:         なし
乗員数:        3名

(左写真はkensukeさんからいただきましたほんとありがとうございます
≦(_ _)≧)
武装:227mmロケット砲×12
動力:不明
走行性能:最大速度:65km/h
       航続距離:???km
総生産台数:???両
  ロケット兵器の歴史は古い。鉄砲よりも古い。諸説あるが、一般には世界ではじめて実戦投入されたロケット兵器は大宋帝国(中国)と金国との戦いで宋軍が使用したのが最初とされる。まぁ、射程も50mそこそことも言われており、命中精度など全く期待はできなかった。殺傷兵器というよりも「脅す」のが目的だったとされる。たしかに、聞きなれない飛翔音とその爆発音は騎馬兵主体だった金軍には相当な効果があったと思われる。馬というのは案外臆病で、全く訓練されていないと、たとえばスーパーのビニール袋が風で舞い上がっただけでも暴れ出すほどなのだから。
 さて、殺傷兵器としてのロケット兵器の歴史も古い。たとえばアメリカ国歌に「ロケットの赤い炎」という一節があるように、アメリカ独立戦争でもイギリス軍がロケットを使用していた。大砲みたいに、撃つと反動があるわけでもなく、大砲みたいにややこしい発射装置もいらないから、ある意味簡便な兵器だったとも言える。大砲の優位が確立するのは、閉鎖器が今のようになって、しかも無煙火薬の発明で大砲の射程が飛躍的に向上したことが決定的となり、第一次大戦ではロケット兵器はほぼ絶滅状態にあった。
 ロケット兵器の開発が再開されるのが第一次大戦後のドイツだった。ドイツでは敗戦で兵器開発が著しく制限され、大砲の開発も大きく制限された。たとえば第一次大戦後に開発された高射砲を「FLAK18」などと命名していかにも第一次大戦末に開発されたように見せかけた例もあるけども、ドイツでは他にも抜け道を探っていた。その回答の1つがロケット兵器だった。この開発はある程度の成功を収め、次の第二次大戦では大々的に使用されている。ただ、命中精度が悪いという欠点はいかんともしがたく、他国ではあまり熱心には開発されなかった。例外としてはBM-13カチューシャを配備したソビエトの例はある。
 対して、アメリカはといえばロケット兵器開発・配備には熱心だったとはいいがたい。アメリカみたいに大砲を大量に生産・配備できた国はロケットを好まなかったのだろう。ただ、空対地ロケットや艦船用対地ロケットは戦後の記録フィルムでよく見かけるし、特に沖縄戦の記録フィルムでは艦船から大量のロケット弾が撃ち出されるシーンはみなさんも1度は見かけた事はあるだろう。ただ、地対地用となると、カリオペの例以外はあまり見かけず、やはり、面制圧となると航空機の登場となって、どうしても影が薄い存在となってしまった。
 前置きが長くなったけども、このMLRSの開発は1971年から始まったといわれる。この頃はベトナム戦争がピークを超えた頃で、ベトナム戦争での戦訓から開発が始まったと考えられるけども、どういった戦訓から導き出されたのかはわからない。まぁ、航空機支援は天候に左右されるとか、その航空機ももはや何十機もの大編隊で飛んでいって、どっかんどっかん爆弾を落とすような時代ではなくなったとか、第二次大戦と違って、航空機は陸軍の管轄から離れたからとかどういう理由かはわからないけども、開発されたのはこんな理由なのだろう。開発開始の翌年の1972年にはアメリカは北ベトナムに対して最後の攻撃を加えたこともあったけども、開発自体はのんびりとおこなわれていたようで、部隊配備がなされたのは1983年になってからだった。ロケット弾自体の寸法は、直径227mm、全長3940mm、ロケット自体の重さが308kg(ロケット燃料などすべて込みの重量)、その中で弾頭自体の重量は159kgとなっている。MLRSはこのロケット弾を12発搭載する。ロケット弾は大砲に変わるべくものではなく、上で書いたように面制圧に適している。MLRSのロケット弾は1発弾ではなく、ロケット弾の中に子弾(弾数不明)をたくさんいれていて、着弾する前に放出して着弾付近の人員を殺傷する。ロケット弾の命中精度の低さは逆に弾頭がバラけて余計に広範囲を制圧できるという利点をもたらすことになる。ただ、12発を一斉に発射できるというわけではない。いちどに発射すると互いのロケット噴射で弾道がかなり狂ってくるので約5秒おきに1発ずつ発射される。つまり全弾撃ち尽くすには55秒以上はかかるが、それでも大砲よりはうんと速い。弾頭は対戦車用にHEAT弾が詰まったものもある。このHEAT弾は最大貫通能力が140mmほどとさほど威力があるものではないが、基本的に戦車は上面の装甲は薄いので、これでも充分期待ができる。これはワルシャワ条約機構軍の大戦車部隊に対抗するには充分だった。ソビエト側も砲塔上面にアップリケ装甲をほどこして対応しているが、この追加装甲はMLRS対策だと言える。
 MLRSは窓はヨロイ戸式の窓を採用している。これはロケット弾は発射すると大量の煙を発生させるため完全に遮断する必要があるからで、射撃時にはこのヨロイ戸を閉じて発射する。同様の理由で、移動中の射撃はできない(する必要はないけども)。全弾を撃ち尽くした場合は、当然再装填して次に備えるわけだけども、MLRSは6発1コンテナ式で、このコンテナごとカラと充填されたロケット弾を入れ換える。そのため、撃ち尽くした場合は迅速に次弾発射というわけにはいかない。
 MLRSは日本の陸上自衛隊でも採用されている。その数は約40両ほど。自衛隊は海外展開はしないし、雨がちな日本の風土では結構使えそうな兵器と思えるのだが、それにしては少ないようにも思える。予算という壁があるのだろうか?


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