パトリオット
全長:        -.--m
車体長:       -.--m
全幅:        -.--m
全高:        -.--m
重量:         --.-t
装甲:         なし
乗員数:        -名

左写真は、あろまさんからいただきました。ほんとにありがとうございます≦(_ _)≧
武装:対空ミサイル20〜32
動力:---
走行性能:最大速度:--km/h
       航続距離:---km
総生産台数:???両

(本文でもかいていますが、パトリオットは数両の車両で構成されていますので、スペック記載が不能なのでご了承ください)
 最初に断わっておくが、「パトリオット」という名前は兵器個別の名前ではなく、射撃統制車・レーダー車・電源車・ミサイル車をひっくるめた名前なのでここでは「パトリオット対空ミサイルシステム」という言葉を使う。
 第二次大戦は勝敗がはっきりした事実がある。それは航空優勢を取ったものが勝つという事だった。結果でいえば、航空戦の消耗戦となって生産力に勝つ国が結局は勝つということだとも言える。制空権を取れば、爆撃機の行動にも自由が生まれる。連合軍爆撃機は工場などを徹底的に爆撃し、「戦場で敵兵器を撃破する」のではなく「戦場に敵兵器を送らせない」という戦略をとった。日本・ドイツの枢軸国軍は何がなんでも爆撃機を落としたくていろいろと兵器を作った。特に技術力の進んだドイツでは歩兵用地対空ロケットや、有線誘導の地対空ミサイルまで作り上げた。地対空ミサイルは結局は戦争には間に合わなかったものの、戦後にドイツ軍兵器を調査したアメリカ軍の報告書に「脅威を与える可能性があった兵器」として名前が残っている。
 さて、戦後になっても、基本的に航空機の重要性が変わったわけではなく、第一撃で可能な限り航空攻撃で相手を叩くという戦術は戦略の基本で、これは我彼承知なのだから、当然、防衛方法も考える必要はある。アメリカ・ソビエトの冷戦期の場合、特にソビエトが地対空ミサイルの開発には熱心だった。アメリカは制空権確保に自信をもっていたのか、戦術レベルでの地対空兵器の開発は進んでいたとはいいがたい。ただ、戦略レベル(たとえば物資集積所なんかの重要基地や飛行場などを守るために)での対空兵器は不要というわけにもいかないから、それは熱心に開発されていた。
 このパトリオット対空ミサイルシステムの開発は1965年に着手された。ただ、この当時はベトナム戦争やアポロ計画などの金のかかることばっかやってたからか、実際の開発開始は1972年からだった。このパトリオット対空ミサイルシステムが他の対空兵器と違っているのは、やはり戦略的な攻撃を防ぐために開発された意味もあるだろうが、1両の車両ですべてを盛り込む(たとえばレーダーとか射撃統制装置とかミサイルとかをすべて1両にまとめる)ことをせず、ミサイルランチャー・レーダー車・発電車・射撃統制車(迎撃管制ステーションといったほうがカッコいいか?)の4種類に分けて運用されてるようになっている。ミサイル車両とレーダー車を分けるのは今では珍しくはないけど、特にこのパトリオットでは徹底されていたといえる。ちなみに、レーダー車・発電車・射撃統制車は1両ずつだけども、ミサイルランチャー車両は5〜8両で運用される。数は任務や予算でちがってくるだろう。これだけの車両で1高射群を形成する。ミサイルランチャーは4ついりコンテナでこのコンテナは密閉式になっていて、無メンテでも7年間の作動は保証されている。ようは、そうそう使うものでもないから、この点は重要な要素とも言えるだろう。ミサイル本体は直径410mm、長さ5310mmで、先端から順に、レーダー送受信装置・誘導用電子機器・炸薬・VT信管・固体ロケット燃料・ノズルとなっている。
 誘導方法はプリセット指令・コマンド指令・TVM指令の3段階方式を採用している。発射自体は普通にコンテナから撃ち出されるだけだけども、プリセット指令は、その後に射撃統制車がミサイルをある程度誘導する。ようは目標に向かって旋回させると思えばいい。コマンド指令とは、射撃統制車がミサイルに対して誘導電波を送って誘導するもので、ようはミサイルに妨害電波を出しても無駄ということになる。誘導電波といっても射撃統制車のレーダー波だけでミサイルを誘導させるのではなく、ミサイル自体もレーダーで敵を捕らえて自己誘導する。これらの情報はミサイル←→射撃統制車の間でやり取りが行われる。ただ、優先順位からいえば射撃統制車の誘導が優先される。この誘導は最大25kmまで可能だと言われている。最終的にはTVM誘導方式に切り替わる。TVM誘導方式とはレーダー車から発信されたレーダーの反射波を拾ってミサイルがそこに誘導するという方式。この誘導方法によって超低空(30mぐらい)から高高度(3万mぐらい)まで広範囲をカバーして命中精度もきわめて高い。
 また、殆ど評価されることがないが、レーダー車もこの開発当時においての最新の技術が使われている。レーダー車のレーダーは基本的にイージス艦のそれと同じものが使われている。ようは、パラボラアンテナみたいなレーダーではなく平面のレーダーを使っている。ジュース缶みたいエレメントと呼ばれるレーダー送受信器を約5000個ほど蜂の巣みたいにぎっしりと積めこんで(実際には4480個〜5161個の間。正確な数はわからない)、それで、電波を発して敵を探知する。首を動かさないでどうやって広範囲の敵を見つけ出すのかというとこのエレメントの発信の時間をコンピューターで制御して、たとえば時間差を出して発信してそれで電波の波をつくって探知するようになっている。ただ、それでも120°が限界で実際のところはレーダー車のコンテナが360°動くようにはなっている。この高度な仕組みのため、普通はレーダー車・射撃統制車・電源車は1つの車で間に合わせているものの(フランスのクロタル対空ミサイル車がいい例)パトリオット対空ミサイルシステムは3つを分離せざるをえないほど大規模なシステムとなっている。
 さらに、論じられる事はまずないが、上記システム制御のためのプログラムも膨大なものとなっている。特にアメリカでは戦後から、敵機の発する電波や敵の無線体系とかいって膨大な情報を収集して自国の兵器開発に生かしている。また、上で書いているように電波を時間差で放出して電波の波を作ると簡単に書いているが、実際には0.0001秒単位の世界でその制御も並大抵ではない。さらに、レーダー車・射撃統制車・ミサイル本体との情報のやり取りも重要でこれの制御も普通の努力ではできない。さらに射撃統制車は敵の脅威判定という重要な任務もある。たとえば敵機にもいろいろあって、ただの護衛戦闘機もあれば、今まさに攻撃せんとする攻撃機もある。戦場から離脱しようとする攻撃機もあれば戦果判定機もあるだろう。こういった機体を区別し、機種を判定し、行動読み取って、攻撃優先順位を決定して射撃を行う。上の例でいえば最優先目標は今まさに攻撃せんとする攻撃機となるが、人間なら目でみればわかるけども、それをコンピューターに判定させるには相当に大変なプログラム作業となる。特に敵機の攻撃は即座に判定する必要があるから人間の判定では間に合わない。だからコンピューター判定が必要となってくる。パトリオットのソフトウェア開発費用は一説には2億ドルとも言われている。膨大なコストだが、それだけ膨大な人員と時間と情報収集が必要だったといえる。ただ、肝心のコンピューター本体に関しては、あまり高性能とはいいきれない。唯一実戦で使われた湾岸戦争の頃のコンピューター性能はスペックから判定して、だいたい「MSX程度」だったと言われている。これは開発段階で、「これ以上コンピューター性能が向上しない」という前提でその時点での最高レベルのコンピューターを使うからで、ようは日進月歩のコンピューター事情からすれば、開発終了の段階ですでに旧式化してしまうというせいでもある。これはすべての軍事兵器のコンピューターに言える事ではある。
 パトリオットは1高射群(レーダー車1+射撃統制車1+電源車1+ミサイル車7ぐらい)で9億ドルとも10億ドルともいわれており、相当に高価な対空兵器となった。ミサイル自体も100万ドル以上するといわれている。発射装置は何度も使うからいいけど、ミサイル本体は言うまでもなく使い捨てだから、もったいないと思うのは貧乏人の性か?。
 1982年から生産が開始されて、アメリカ軍に配備された。唯一の実戦投入例は1991年の湾岸戦争で、この時は本来の目標である航空機ではなく、もっぱらイラク軍の地対地弾道ミサイル「スカッド」の迎撃に使われた。シャットアウトとまではいかなかったものの、それなりの戦果は挙げた。ただ、アメリカ軍にしてみれば、しこたま金と手間と技術をかけた対空ミサイルシステムがこんな程度の戦果だというのは不満だったろう。また、日本でもマスコミなどによって、このパトリオット対空システムは大々的に報道がなされたせいもあって、日本でも普通の一般人からもよく知られた対空ミサイルではあった。
 パトリオット対空ミサイルシステムは上記のように高価なせいもあって、採用している国はアメリカを除くと極端に少ない。その極端に少ない例が、日本だった。日本ではナイキやホークといった従来の対空ミサイルの老朽化によって、新型対空ミサイルを探していた頃にこのパトリオット対空ミサイルシステムの採用を決定した。昭和60年度予算から調達が開始され、実際に配備開始されたのが平成元年からだった。ちなみに配備先はナイキJを装備していた航空自衛隊で、ホークを使っている陸上自衛隊ではパトリポット対空ミサイルシステムは採用されていない(値段が高いので)。航空自衛隊には6個高射群があるが、高すぎる事もあって配備転換は当初計画よりも遅れていたものの、平成8年3月までには6個高射群全ての変換が完了した。
 日本の場合「ソビエト」という強大な軍事国家があったせいもあり進んで最新鋭兵器を導入してきたものの、制式当時とちがって、配備が進んだ頃にはソビエトという国家がなくなってしまった。もはや本来の活躍はすることもないだろうが、やはり、今の日本の平安は「Sivis Pacem Parabellum」(平和を望むなら戦いに備えよ)で支えられているのだろうか?。それを知らない日本人が多いのは悲しい事なのだろうか?


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