40Mニムロッド対空戦車

全長:        5.45m
車体長:       ?.??m
全幅:        1.90m
全高:        2.89m
重量:        10.5t
装甲:     最大13mm
乗員数:        6名
武装:40mm機関砲×1
動力:160馬力
走行性能:最大速度:47km/h
航続距離:250km
総生産台数:???両
 何かのコンテストがあったとする。あなたはその審査員になったとする。どちらか気に入った方を選べ?といわれたらどうするか。それは簡単。自分が気に入った方を選べばいい。しかし、あなたが政党の派閥争い真っ只中の政治家だったとする。どちらかの派閥につけといわれたらどうするか?。たぶん困るだろう。自分の好きな方を選ぶのではない。勝つ派閥を選ばなければいけないのだから。

 第二次大戦、特に東部戦線というのはドイツ対ソビエトの戦いというイメージが強い。実際にそうなのだが、地図を見れば分かるようにドイツとソビエトは陸地を接していない。当時と今では国境が違うが、当時からして国境が接していなかった。それが崩れたのがポーランド戦役以降で、ポーランドがドイツとソビエトに制圧されてからドイツとソビエト国境は接するようになった。詳細は省くが、これが独ソ戦の発端となったとも言えなくはない。
 今の地図でもいいからヨーロッパの地図を見てもらえれば幸いだが、ドイツとソビエトの間にはいくつかの国があった。これらの国は独ソ戦中にどちらかについて戦う事を余儀なくされていた。ソビエト憎しのあまりドイツ側に立ったフィンランドは例外として、東欧諸国は中立で洞ヶ峠を決め込むというわけにはいかなかった。そうするとどっちかが攻めこんできて「味方しろ!」といってくるのは間違いないし、スイスのように国際条約で中立を完全に守れたのならまだいいが、中立を決め込んだ所で、戦勝側から不利な扱いを受けるのは目に見えてる。
「おのれ。よくも味方しなかったな・・・。」
大国ならそれでもいいが、小国ではそれは致命的といえる。もはやどちらかについて戦うしかなかった。独ソ戦当時は圧倒的にドイツ軍が有利だった事もあり、ほとんどの国がドイツ側についた。これが悲劇の始まりでソビエト軍が反撃に転じると、これら東欧諸国は対応に苦慮した。もうドイツ側にはついていけないとルーマニアなどの各国は停戦を申し込み、ソビエト軍の攻撃を受けなくなったかわりに、ソビエト軍の尖兵としてドイツ軍の真正面に立たされたし、ソビエトから露骨に政治干渉を受けるなどの悲劇があった。ハンガリーはドイツ軍の策略で終戦までドイツ側に立ったけども、そのために戦後になって賠償問題などが表面化した。ここは政治云々を語るところではないので、これらの解説はここまでとしたい。
 さて、これら東欧諸国の中には工業基盤が整っていたところも多かった。よくクローズアップされるのがチェコスロバキアで、たしかに通称「チェコ機銃」と呼ばれたZB26は各国に輸出され、またはライセンス生産され、はたまた無断コピーされ各国で使用された。影響を受けた機関銃も多く、イギリスのブレンガンや日本の96式軽機関銃などがよく知られている。しかしチェコスロバキアはそれだけでなく、戦車の輸出も行っていた。ただ、1939年3月にドイツに併合された事もあり、輸出もそこで止まった。ただドイツ軍装甲師団強化に寄与はしている。ポーランドは真っ先にドイツの餌食になった事もあってあまり評価がなされていないが、ポーランド開発の戦車もあったし、特にポーランドは工業技術の集大成ともいえる航空機だって独自に揃えていた。
 ドイツと終戦まで運命を共にしたハンガリーでも戦車の開発はなされていた。戦前戦中でも戦車の開発はなされていた。ドイツの影響を多大に受けたのも少なくないし、性能面でいえば「まぁないよりはマシか」といったものが大半だったが、その中で1つ、対空戦車というジャンルの戦車を開発していた。
 40Mニムロッドと呼ばれる対空戦車がそれで、元々はスウェーデンのLVKV40と呼ばれる自走対空砲とされる。ただフルコピーではなく、ハンガリー独自の改良が施されている。ニムロッド対空戦車はボフォース社製の40mm機関砲を1門搭載していた。この40mm機関砲は対空兵器としては優秀でイギリス軍でも多用されていた。またニムロッド対空戦車の出現当時(1940年)においては戦車の装甲もさほどではなくこの機関砲でも撃破は十分に可能だった。まさに万能機関砲だったといえる。大型機関砲なので弾も大型だし、戦闘室も広くとる必要がある。ニムロッド対空戦車の車体は同国のトルディ軽戦車をベースにしているけども、大型の戦闘室が必要なため車体を長くしている。そのためトルディ軽戦車の転輪は4つだけどもニムロッド対空戦車の転輪は5つある。車体ベースが軽戦車なので装甲も薄く、最大でも13mmしかなかった。別に戦車を相手にするわけでもないのでそれでも良かったのだろう。外見的に、戦車の車体に小型天文台を乗せたように見えるのは俺だけだろうか?砲塔はそれほど大きいものではないが、車体が小さいため(車体長さは延長されたけど横幅はそのまま)写真でみるニムロッド対空戦車は砲塔がデカく見える。
 戦果のほどはあまり伝わっていない。40mm機関砲だから発射速度が遅く、高速になりつつあった航空機に対して戦果を挙げられたとも思えない。数さえ揃えれば多少は使えただろうが、小国ハンガリーでどこまで数がそろえられたかは疑問が残る。総生産数はわからないが、おそらく50両前後だろう。小国で生まれた不幸だというべきなのだろうか?


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