ZTS T-72
全長:        9.53m
車体長:       7.00m
全幅:        3.65m
全高:        2.19m
重量:         48t
装甲:       ???mm
乗員数:        3名

(上記データはZTS T-72M1のものです)
武装:42口径
     125mm滑腔砲×1
    20mm機関砲×2
    7.62mm機関銃×1
動力:S12U
    850馬力ディーゼル
    V型
走行性能:最大速度:60km/h
航続距離:600km
総生産台数:???両
 チェコスロバキア共和国が、チェコとスロバキアに分かれてたのは平成になってからでそう昔の話ではない。当時はソビエト連邦の崩壊や東西ドイツ統一の話題もあったせいか、いまいち日本では大ニュースとはならなかった。そもそも、チェコスロバキアが2つの国の連合だったと知る人が少なかったからでもあるだろう。何がどう違う国なのだろうと遠い日本に住む自分はそうとしか思えないのだが、やはり民族自決の現れなのだろうか?チェコスロバキアを略して言う場合、ほとんど例外なく「チェコ」と言う。「チェコ・スロバキア、略して『チェスロ』」なんてまず言わない。それほどチェコは有名だが、スロバキアはそれほど無名だった。日本ではチェッコ機銃と呼ばれた機関銃もあるせいでもあるだろう。
 チェコとスロバキアが分かれたのは1993年1月1日。別に独立戦争をしたのではなく、きわめて平和に分かれた。もっとも重要なのが軍事力で、兵隊さんはチェコ出身者とスロバキア出身者に分ければいいが、兵器はそうもいかない。平和裏に国力に応じて平均的に配分されたものの、どうしても分割できなかったものがあった。それは兵器工場で、さすがにこればかりは分割はできないし分割できてもそうした予算などなかった。ちなみに、チェコスロバキアの主力戦車はT-72戦車だけども、1980年頃にソビエトからライセンス生産契約がなされチェコスロバキア内で生産が行われていた。チェコスロバキアではZTS社がその生産を行っていたけども、その工場はスロバキア領内にあった。つまりチェコは戦車工場を失った。無論、スロバキアとしては儲け物だった。

 分離独立したスロバキアでは当然ながら、人口も減ったし国力も落ちた。困ったのはZTS社だった。国力が落ちたので戦車もそうそういらない。だいいちソビエトが無くなったのだから、余計な戦車生産は必要ないし無駄でもあるし、だいいちそんなお金などはない。ZTS社では生き残りをかけ(といえば大げさかもしれないが)戦車生産力を生かし兵器輸出事業に乗り出した。

 ZTS社でライセンス生産していたのはT-72戦車の輸出型(T-72M1975)、いわゆるモンキーモデルで、ようはソビエト軍仕様を人間と例えると輸出仕様は人間に劣る猿とアダ名されたことによる。この型は湾岸戦争でイラク軍が使用し、完全なまでにやられたせいもあって評判はすこぶる悪かった。ZTS社では新型のリアクティブアーマーを砲塔と車体にびっしりと装着し、夜間戦闘でイラク軍が敵(かな)わなかった教訓から夜間暗視装置も強化されている、また戦車長用にも独立したサイトが設けられている。
 一番の特徴は、砲塔左右に1門ずつ、計2門のエリコン社製の20mm機関砲が搭載されている事で、これはいうまでもなく攻撃ヘリ用でたしかに当てさえすれば撃墜はできるだろうが、それ以前の問題で対空用のFCS(射撃統制装置)がない対空機関砲がはたして有効なのかは疑問が残る。しかも攻撃ヘリのATM(対戦車ミサイル)の最大射程は4キロはゆうにあるし、戦闘時の射程でも1km以上になる。この距離だと余計に当たらないし、これだけ離れると銃弾の飛翔中に空気抵抗で速度が落ちて威力が激減する。装甲が施された攻撃ヘリにどこまで有効かは疑問が残る。そのためかこれの改良型には20mm機関砲は付けられなかった。しかし、その改良型の改良型では「威力が落ちるのなら強力な機関砲を積めばいい」と思ったのか知らないけども、30mm機関砲が搭載されるようになった。あと、武装の点では戦車長用の12.7mm機関銃が搭載されていないのも特徴といえる。砲塔上が環境センサーやらペリスコープやらでごっちゃになったから搭載できなくなったという一面もあるのかもしれない。
 いずれの型も営業的には成功していない。ようは1両も売れなかった
 T-72戦車自体は各国に積極的に輸出され、またライセンス生産契約も各国で結ばれた。ソビエト連邦の崩壊後各国で改良がなされ、独自の進化を遂げているのが面白い。このZTS T-72もその1つだが、対空機関砲を付けた例はこれしかない。その意味では戦車史に残るのだろうか?。


  ZTS T-72のバリエーション

 ZTS T-72M1:
 ソビエトのT-72輸出型(T-72M1975)に独自開発のリアクティブ・アーマーと20mm機関砲が搭載されているのが外見上の大きな特徴。特に20mm機関砲はSFチックな外見印象を受ける。あと、戦車長用スコープや環境センサー(?)が砲塔上についているのが特徴。目立ちそうな気もするがT-72戦車自体が背が低いので問題がないのだろうか?

 ZTS T-72M1-A:
 外見上でもっとも大きな変化は20mm機関砲がなくなった点にある。外見上では分かりづらいがリアクティブ・アーマーが新型になった。また、FCSが新型になり精度が向上したという。ただ先進国のそれと比べると能力は劣る。またコンピューター操作部自体も古めかしく配線がごちゃごちゃと露出しており最新鋭とは言いがたい。

 ZTS T-72M2:
 M1-Aで一旦廃止になった対空機関砲がまた装着された。最大射程を延ばすためか今度は30mm機関砲を装着している。ただし砲塔右側のみの1門しかない。発射速度が遅い、しかも1門しかない30mm機関砲でどこまで攻撃ヘリに対抗できるかは疑問が残る。「俺たちにゃ30mm機関砲があるんだゾ!」という脅し程度には使えるのかもしれない。


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