ゲパルト

全長:        7.70m
車体長:       7.09m
全幅:        3.40m
全高:        4.00m
重量:         47.0t
乗員数:        3名
武装:35mm機関砲×2
   (660発搭載)
動力:MTU MB838Ca M-500
    830馬力ディーゼル機関
    水冷10気筒
走行性能:最大速度:65km/h
       航続距離:550km
総生産台数:???両
 第二次世界大戦では枢軸国・・・特にドイツは航空攻撃に悩まされた国だった。ドイツには世界最強の戦車群があったものの、航空攻撃、特に戦闘爆撃機にやられまくった。戦闘爆撃機はドイツでは「ヤーボ」と呼ばれていたけども、「ヤーボ死」という言葉も流行ったといわれている。そのためドイツでは対空機関銃を片っ端から装甲車両に載せて戦場に送り出したものの、当時の飛行機の速度ではその運動についていけない例も多々あった。それでも期待以上の戦果があったものの、結局ドイツを守りきる事はできなかった。
 戦後になって、兵器も飛躍的に進化していた。特に航空機のジェット機化は大きい。速度が早くなると単純に考えても対空機関銃が当てにくくなる。だいいち旋回速度がついていけないし、照準も大変だった。距離と速度、特に航空機には「高度」という要素が含まれているので、狙いを定めるのも大変だった。ただ、戦後はエレクトロニクスとレーダーの飛躍的向上で、航空機の距離、高度、速度が瞬時に求められるようになったし、未来位置照準もコンピューターで即座に計算ができるようになった。だいいち戦車の空の守りは必要だから、各国で続々と自走対空機関砲が誕生していった。話は進んで、ベトナム戦争では機関銃での対空射撃による被害は結構多かったし、1973年の第4次中東戦争ではアラブ軍が使用したソビエト製自走対空機関砲の”ZSU-23-4シルカ”はイスラエル航空機に大損害を与えているので、実際にはこの手の兵器の有効性は相当にあると言える。
 ゲパルトは開発開始が1965年とされる。この頃はアメリカからの供給品であるM42ダスター対空戦車があった。これは40mm対空機関砲を2門搭載したもので、威力はあったものの、光学照準のため命中はなかなか難しかった。ストレートに言えば無理だった。戦闘爆撃機に悩まされたドイツだからこそ、その怖さは知っていたし、大航空部隊をもつワルシャワ条約機構軍を防ぐには高性能の対空自走砲の配備は必要不可欠だったからでもあったろう。1965年といえばレオパルド1が就役した年で、車体の選定ではすぐに、このレオパルド1が選ばれた。肝心な対空機関砲はスイスのエリコン社の傑作機関砲である90口径の35mm機関砲が選ばれた。この毎分550発(1門あたり)の発射速度を誇る機関砲は俗にL-90と呼ぶけども、これは日本名で本当の名前は不明。このL-90はレーダーと高性能コンピューターで、敵機が真っ直ぐ飛んでいるならば15発に1発は命中させられる驚異的な性能をもっていた。ただ、コンピューター車と電源車などが別に必要で、その展開時間も多少かかるのが欠点だった。無論自走化すればその問題は解決する。かくして搭載が決定したというべきだろう。その搭載方法も、以前の自走対空機関砲はほぼ例外なく、砲塔の前に機関砲を装備していたけども、ゲパルトは砲塔両側面に各1門ずつ搭載している。この方式はたしかに成功で、砲塔前につけたらかさばるし、機関砲弾装填にも工夫が必要だから、たしかに優れた方式だった。後の自走対空機関砲はこの搭載方法を真似しているのが多い。余談ながら、L-90をそのまま乗せているのではなく、スリットを設けている。理由は放熱向上と軽量化のためでだけども、材質が進歩して、より薄い砲身でも爆発力に耐えられるようになったのかもしれない。また、機関砲は仰角85°で俯角は-10°までとれるため、真上から急降下爆撃でもしてこないかぎりはどこにでも撃てる。速い航空機に対処するため、砲塔の回転速度も結構速く、1秒に95°まで動かせる。当然といえば当然だけど、戦車よりもずっと早い。
 レーダーは砲塔後ろの上に捜索レーダーを、砲塔前面に追跡レーダーを搭載している。分けているのは、レーダーを共通にしてしまうと、敵機を追跡中に新しい目標が出てきた場合にそれを探知できないという欠点が生じるからである。捜索レーダーは戦闘状態だと、結構高くなってしまい、全高は4mにもなってしまう。そのため使わない場合は後ろに折りたためるようになっている。追跡レーダーには高性能コンピューターが連動しており、IFF(敵味方識別装置)もついていて、探知したものが敵か味方かが瞬時にわかるようになっている。また、追跡レーダーは、向かってくるのか去ってゆくのか?また、機種まで特定して脅威があるかないかを瞬時に判定して、有効射程内にある最優先脅威敵機に射撃するようになっているという。このあたりの技術の進歩は飛躍的に進歩しつつある。
 元がレオパルド1のため、防御力はかなり高い。もっともこれは車体で砲塔はわからない。特に砲塔正面に追跡レーダーがあるので、当然ながら、ここに食らったら戦闘力は激減する。こういう状態になっても射撃できるように光学照準器もついている。なお、ゲパルトは1門あたり対空用HE弾(炸裂弾)310発。対地用徹甲弾20発を搭載している。対地用はあくまで緊急用で、戦車の装甲は貫けないけども、IFV(歩兵戦闘車)程度なら貫通は容易にできる。
 1975年に量産開始。配備先は、本国西ドイツはもとより、ベルギーやオランダでも採用されている。ただ、オランダなどでは独自の改修を施しており、特にレーダーは本家ゲパルトとは異なっているので、識別は難しくはない。


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