38(t)駆逐戦車"ヘッツァー"
全長:        5.85m
車体長:       4.90m?
全幅:        2.16m
全高:        2.50m
重量:          16t
装甲:      最大60mm
乗員数:        4名

左写真は言うまでもなく
WTMのやつです(^^;)
武装:48口径75mm砲×1
    7.92mm機関銃×2
動力:プラガ
    160馬力ガソリン機関
走行性能:最大速度:42km/h
       航続距離:185km
総生産台数:2584両
 第2次大戦中のドイツ国防軍の歩兵連隊は第14中隊が戦車猟兵と呼ばれる兵科だった。任務はその名前のように対戦車戦が任務で7.92mm対戦車ライフルと37mm対戦車砲で武装していた。ただ、大戦半ばになってくると対戦車ライフルはもはや戦車相手には通用しなくなり、37mm砲はソビエトの戦車を相手にして「ドアノッカー」とか「聴診器」とかアダ名されるようにこれまた通用しなくなっていった。そこで、より大口径に50mmと75mmと大きくなっていったものの、重量も37mm対戦車砲(Pak35/36)で436kg、50mm対戦車砲(Pak38)で1062kg、75mm対戦車砲(Pak40)で1500kgと500kg単位で重くなっていった。そのため機動力が劣ったのは当然の理で引っ張る車がない場合、他に手段がない場合はそのまま遺棄しなければならない例も多かった。ソビエト国内の道路事情は悪く、馬での牽引はできない場合が多く、雨が降ったらすぐ泥濘と牽引トラックでも引っ張るのが難しい場合もあった。かくして作られたのが砲塔をなくした装軌装甲車両に搭載した駆逐戦車だった。キャタピラ付き装甲車両に載せれば前記の問題は殆どが解決できたからだった。
 38(t)駆逐戦車”ヘッツァー"は、1943年3月にグデーリアン将軍(当時機甲兵総監)の「防御力を十分に持たせた低姿勢な軽駆逐戦車を」要求してきたために生まれた。この当時、ちょうどスターリングラードでドイツ第6軍33万人が失われた直後で(第6軍は降伏時に9万人まで減っていた)、すぐに、宣伝省のゲッベルスが「総力戦」を国民に要求してきた歴史的な背景もあった。とにかく、即戦力になるように要求されたので、1から作るヒマはない。そこで目をつけたのは38(t)軽戦車だった。もはや対戦車戦闘で役に立たなくなっていた38(t)軽戦車だったけども、その生産設備はそのままだった。そこで、砲塔をなくし、車体を極力流用して、生産ラインをそのままで作れるようにして、48口径75mm砲を搭載した駆逐戦車が誕生した。それがヘッツァー(扇動者)だった。
 砲塔式にしなかった理由は砲塔は360°撃てるという利点があるけど、生産に手間取るし、牽引対戦車砲の自走化と考えれば固定砲塔でも十分だった。また、軽戦車なので無理矢理にでも75mm砲は収まらなかっただろうから、非常に賢明な選択であった。ただ、とにかく数をそろえる必要があったから、簡略化の結果というのが本音だろう。
 ヘッツァーは1944年4月から生産が開始され、配備先は主に上で書いた歩兵連隊の戦車猟兵中隊に配備された。この頃になると歩兵用の対戦車兵器もパンツァーファウストが配備されだしたので、歩兵でも戦車に立ち向かえたけども射程が30mではたかがしれている。やはり対戦車ミサイルが無かった時代は戦車には戦車砲が一番だった。
ヘッツァーは言うまでもないが、相手戦車と1対1の真正面からの戦いならば勝ち目は薄かったが、攻撃力に限っていえば当時の主力戦車4号戦車と同じ大砲を積んでいたので、戦車と同じ破壊力があった。また姿勢も低く(機関銃の高さを入れれば2.5mだけど、車体のみの高さは2.2mを切ったのではなかろうか?)待ち伏せにももってこいだった。また、装甲もとりたてて厚いものではなかったが、車体全てに傾斜が与えられていて、被弾性も非常に良かった。小柄な体にかかわらず、攻守に優れ、期待以上の戦果を収めた。
 元々が軽戦車なので、当然車体が小さく、戦闘室が狭いので特に砲弾装填の際はすごく大変だったのと(戦車は皆狭い車内だが・・・)射界があまり取れないというのが欠点といえば欠点だった。しかし、優秀な駆逐戦車には違いがなく、終戦翌年の1946年にはスイス陸軍で採用され(名称はG13)、また生産していたチェコスロバキアでも終戦後にも生産が続行され、1940年代末期まで使われたという。


 ヘッツァーは上で書いたように38(t)軽戦車をベースに作られた。38(t)軽戦車の車体に台形の装甲板をよっこらしょっと乗せてそこに75mm砲を搭載しているような感じで、ただ、4号戦車や対戦車砲Pak40にはあったマズルブレーキがなぜかヘッツァーにはない。理由は不明だけど、そのために反動が大きくなるから駐退器がデカくなるという弊害もあった。固定砲塔内部にこの駐退器が収まらず半分ぐらいが外に露出してそのままではマズいので曲面加工の装甲板で覆われている。そこまでするならマズルブレーキを付ければよさそなモンだけども、付けてしまうと車体が小さいからバランスが取れなくなったのだろうか?。この特異な砲基部のせいで、なんとなく「モスラ」を想像してしまうのは私だけでしょうか?(;_;)
 機関銃は車体上部についている。この機関銃はリモート操作が可能で、ようは車体内部から射撃が可能だった。また、操縦手用に当然窓がついていたけども、その下の部分にスプラッシュガードがなく、車体前部に銃弾が直撃して跳ねてきた場合に操縦手に直撃しそうな気もするが、実際の所はどだったんだろか?
 ヘッツァーはペリスコープはあったけども、別途に砲兵用の砲隊鏡が用意されていた。ヘッツァーに乗っていたのは戦車兵ではなく、戦車猟兵(対戦車砲兵)なので、標準で搭載されたと思われる。等倍のペリスコープよりは倍率がついていた砲隊鏡の砲が見えやすいに違いはなく、評判はよかったと思われる。

 派生型としては、火炎放射型も製作されている。製作数は不明だが、ラインの守り作戦(バルジ作戦)にも少数(20両)が投入されている。


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