レオパルド1

全長:        9.54m
車体長:       7.09m
全幅:        3.41m
全高:        2.76m
重量:         42.4t
乗員数:        4名

(上記データはレオパルド1A1のものです)
武装:51口径105mm砲×1
       (60発搭載)
    7.62mm機関銃×2
       (5500発搭載)
動力:MTU MB838Ca M-500
    830馬力ディーゼル機関
    水冷10気筒
走行性能:最大速度:65km/h
       航続距離:600km
総生産台数:2437両
 1945年5月7日。ドイツ降伏。ここに足掛け6年にわたるヨーロッパでの戦いは終わった。ドイツに課せられたものは、領土の割譲と、これが致命的な件だけども、東西に分割されてしまった。これは国家にとっては屈辱的以外のなにものでもなかった。ソビエト占領地域にはドイツ民主共和国(東ドイツ)が、米英仏占領地域にはドイツ連邦共和国(西ドイツ)が誕生し、長い長い冷戦が終わるまで実に45年もの長き屈辱を味わう事になった。
 さて、西ドイツではお隣が敵だったので、軍備をしないわけにはいかず、西ドイツ軍での装備は基本的にアメリカ軍装備だった。主力戦車は当時アメリカの最新鋭戦車であるM47やM48パットンといったものが供与されていた。地勢上アメリカは最大限の兵力を西ドイツに展開させていたし西ドイツに最大限の軍事物資を供給していた。ただ、当の西ドイツでは主力戦車にはM48パットン戦車では不満だったという。自国のドクトリン(教義)に合わないというのが理由とされるけども、実際の所は「自国の護りは自国の兵器で」というのが本音ではなかったのだろうか?ましてやかつては米英ソといった大国を向こうに回して互角以上に戦ったドイツの意地でもあったろう。1950年代中頃から西ドイツでは独自開発に乗り出したものの、この計画に同じく新しい主力戦車を欲していたフランスが飛びついた。1957年には共同開発協定が締結した。とはいえ、1つの戦車を共同開発するという事でもなく、同じ仕様で西ドイツ側とフランス側とで試作車両を作って競い合わせるものだった。結果からいえば西ドイツ側のほうが優れていたものの、フランス側は自分かわいさに、共同開発を降りてしまった。ともあれ、西ドイツ側はこの試作戦車をレオパルドと命名(レオパルド1という名称は後に登場するレオパルド2と区別するためにつけられた)された。生産車両は1965年9月から逐一西ドイツ陸軍に引き渡されたものの、生産は砲塔は開発を担当したクラウス・マッファイ社は当然として、車体は開発を担当したポルシェ社ではなく、砲塔と同じクラウス・マッファイ社が生産していた。なんでもポルシェ社は生産コストが高いからという理由だそうだけども、日本ならば、開発も生産も同じ所が絶対に担当する点とは好対照といえる。
 レオパルド1は西ドイツは元より海外で採用した国もいくつかある。ベルギー・オランダなどのヨーロッパ諸国やカナダやチリや遠くは地球の真裏のオーストラリアにまで採用された。性能がいいという理由の他に生産を担当したクラウス・マッファイ社が各国の仕様に応じて改修を行なって納品したという細かな配慮を行なったという点も大きい。もともとドイツ兵器は改修が利くようにゆとりをもって設計されるので、この点も利点となったと思われる。
 レオパルド1はその後も生産され配備されていったものの、後継戦車レオパルド2が1978年から配備が開始された都合もあり1979年には生産は中止となった。その後もレオパルド2と共に西ドイツ防衛の一翼を担ったものの、逐一予備役にまわるようになり、現在(2001年5月)では全てが第一線装備から退いている。
 結局実戦を体験しなかった戦車ではあったが、仮想敵(ソビエト)の侵攻を許す事はなかった事を考えれば、見事に役目を果たした戦車であったと言える。

 レオパルド1は当初は90mm砲搭載を考えていたとされる。それが105mm砲になったのは先を見越してという事とあるけども、実際にはこの頃(1950年代中頃)にはソビエト軍はT-55戦車を就役させるようになり、この戦車は100mm砲と最大210mmの装甲を備え、それに対抗したものと考えられる。特にドイツはソビエト軍との戦車競争で口径のデカい大砲に悩まされたのだから、当然の選択とも言える。余談ながら、試作型の一番目は90mm砲搭載で、形状もT-34戦車のように砲塔が前方にあるので、なんとなくT-34を思い出させる形状ではある。余談ながら、砲塔形状はおわん型をしておりこの点でもソビエト戦車を思い出させる。105mm砲は西側スタンダートのイギリス製L7ライフル砲で、ただ、レオパルド1に搭載されたL7ライフル砲は砲塔内スペースを確保するために砲尾を切り取られている。そのためレオパルド1搭載L7ライフル砲はL7A3と呼称される。この105mm砲砲弾の搭載数は60発で砲塔に18発。車体に42発搭載されている。榴弾と徹甲弾の数の配分は不明。任務によって搭載数が異なると考えられる。砲身は野外で20分で交換可能といわれている。
 エンジンはドイツ製主力戦車としてははじめてディーゼルエンジンを採用している。第2次大戦時のドイツでは高出力なディーゼルエンジンが製作できず、偵察車両等に採用された他は殆どガソリンエンジンだった。戦車は全てガソリンエンジンだった。高出力のディーゼルエンジンを搭載しつづけていたソビエト戦車とは好対照ではあるが、やっとこさドイツも高出力のディーゼルエンジンを搭載したのだった。ディーゼルエンジンは燃料の関係上発火の可能性が少なく、これは狭い乗員に心理面で与える安心は計り知れないものがある。また、燃料もガソリンではなく低質な油でよいので補給面でも有利である。また、高出力なエンジンは高い機動性を与える事となった。実際、ドイツはT-34戦車などの高機動戦車になやまされており、自国はティーガー1重戦車などの破壊力の大きい戦車はあったものの、機動性に欠けそれが原因で負けた戦闘もあったというから、その意味では機動性は最重要項目だったと思える。
 砲塔はいかにも被弾性に優れた丸みをおびた砲塔で、これは鋳造による結果だけど(丸みを帯びた砲塔は鋳造では作りやすい)後述するけどもレオパルドA3からは溶接砲塔になった。そのため装甲板は直線となったものの、傾斜が与えられていて砲弾を弾く効果は落ちていない。と思う(^^;)
 車体は、当時の戦車と比較してもさほど注目点はない。まぁ細かい点をいえばドイツ戦車には操縦手用にバックミラーが装備されていたという点にある。戦車長が細かく指示すれば済む問題だとも思えるけども、やはり操縦手が実際に見える見えないでは操縦面でもいろいろと利点欠点があるのだろう。


 レオパルド1のバリエーション

 レオパルド1A1
 初期生産型レオパルド1の後期生産型。改修の詳細は不明

 レオパルド1A1A1:
ちと名称がややこしいけど(^^;)。砲塔とその防盾に追加装甲を施したもの。これが最大の特徴だけども、細かい点をあげれば、エンジン吸気口に防塵フィルターが追加された。この車両にSEM80/90というデジタル通信機(敵が傍受しにくい。アナログ方式は傍受されやすい。)を装備した車両をA1A3という。

 レオパルド1A1A2:
上のA1A1にPZB200という低光量テレビを追加した車両。SEM80/90デジタル通信機搭載型はA1A4と呼ばれる。

 レオパルド1A2:
砲塔の装甲をより厚くした。また、操縦手のパッシブ式暗視装置を新型に変えた。これに小改良を加えた型はA2A1で、A2にSEM80/90デジタル通信機を搭載した型をA2A2、A2A1にこれとPZB200低光量テレビを搭載した型はA2A3という。第5生産型の342両中232両が改良を受けた。
関係ないがややこしい(^^;)。

 レオパルド1A3:
砲塔製造を、鋳造をやめて溶接構造にして、HEAT弾用のスペースドアーマーを搭載したもの。そのため砲塔装甲が直線的となっているのが特徴のため識別は比較的容易。第5生産型342両中A2への改修を受けなかった110両全てがこの改修を受けたとされる。これまた、A3A1が存在しA3A2とA3A3という改修型も存在する。詳しくはA2と同じなので上のA2の欄を読んで欲しい。書くのメンドいんです(;_;)

 レオパルド1A4:
戦車長用にPERI-12Rという安定化照準器が採用された。どういったものなのかが不明(;_;)。また、大砲のスタビライズ化がなされ、FCSも新型のに変えられた。スタビライズ化とは、戦車の走行中に大砲を撃つ能力でコマは回転すると安定するようにこの原理で開発されたという。具体的にどんな仕組みなのかは不明です(;_;)。このあたりからハイテク化が顕著となった。

 レオパルド1A5:
レオパルド1の最終発展型。FCSがさらに新型になった。アトラス・エレクトルニクス社のEMES18というFCSに換装されている。このEMES18には、レンズでは世界的にトップクラスのメーカーであるカール・ツァイス社の技術がふんだんに使われて赤外線画像システムは同社の開発品。無論、大砲の威力が上がったわけではないけども、命中精度は格段に上がった。これもSEM80/90デジタル通信器搭載型はA5A1と呼ばれる。

 レオパルド1A6:
レオパルド1を90年代の戦車として使えるように120mm滑空砲に換装したもの。また、追加装甲もあり、元がレオパルド1という印象は受けない。ただし、改修費用がやたらとかかるため試作のみで終わった。

 あと、バリエーションとしては車体を流用したゲパルトもその範疇に入るけども、詳しくは別項に譲りたい。


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