レオパルド2

全長:        9.67m
車体長:       7.72m
全幅:        3.70m
全高:        2.79m
重量:         55.2t
乗員数:        4名

(上記データはレオパルド2のものです最新型A5では寸法が若干異なります)
武装:44口径
    120mm滑空砲×1
       (42発搭載)
    7.62mm機関銃×2
       (4750発搭載)
動力:MTU MB873ka501
   1500馬力ディーゼル
    水冷12気筒4ストローク
走行性能:最大速度:72km/h
       航続距離:550km
総生産台数:約1800両
 1960年代中期以降の西ドイツでは陸軍戦力はレオパルドという戦車を配備しており(今ではレオパルド1と呼ばれるけども、このレオパルド2が配備されるまでは単純に”レオパルド”と呼ばれていた)戦力的にはかなり充実していた。しかし、仮想敵国のソビエト(およびその同盟国)は55口径100mm砲搭載のT-55戦車から62口径115mm滑空砲搭載のT-62戦車にバトンタッチしており、背が低く(2.18m)レオパルド1の優位も怪しくなってきた。また、西ドイツでは125mm砲搭載の戦車をソビエトが開発中という情報もあり、105mm砲搭載のレオパルド1のアドバンテージも怪しくなってきた。
 そのためか、西ドイツでは1960年代中頃から次期主力戦車を共同開発することになった。共同開発先は今度はアメリカだった。言うに悪いが当時のアメリカ戦車はお世辞にも一流とはいえず、戦車形態も第2次大戦頃とあまり変化がなかったので、アメリカ側としてもここで戦車形態を一新しようと思っていたのかもしれない。当時はMBT70(Main Battle Tank 70・・・70年代にむけた主力戦車)と呼ばれる共同開発戦車がスタートした。この試作車は1967年には完成した。主砲は152mmガンランチャーで大砲の他にシレーラミサイルという対戦車ミサイルを発射できた。あとの兵装としては20mm対空機関砲を搭載。引き込み式で撃たない時は砲塔に密着して収納していた。車体も油圧式のサスペンションで走行中でも車体を46cmも低くできた。自動装填機構搭載で乗員は3名。変わっているのは3名全てが砲塔に配置されたという事で、ようは操縦手も砲塔配置となった。承知のように砲塔は真正面しか向かないわけでもないので、其の時は操縦手はマズいから、操縦手は常に前を向くような仕組みになっていた。
 これを見てわかるようにMBT70はコストがすんごくかかった。一節には予定した予算の9倍もしたといわれ、もはやMBT70の失敗は目に見えていた。特にドイツ側では兵装の152mmガンランチャーが不満で、主力戦車に対戦車ミサイルを搭載するのには乗り気ではなかった。結局MBT70は1970年1月には開発中止となった。余談ながらこの頃のアメリカはベトナム戦争やアポロ計画など、すごく金のかかる事をいっぱいやっているから、すごい金持ちな国なんだなぁと思えてしまう。
 さて、レオパルド2はこのMBT70が開発中止になったから急遽開発されたのかというとそうでもなく、開発自体はMBT70とだいたい同じ時期だった。その頃の開発案はレオパルド1の改良型みたいなモンで、実際この案は105mm砲を搭載を計画していた。違ったのは105mm滑空砲の搭載を要求した事でこれはT-62戦車の影響と考えられる。ともかく、金をかけず早急に開発したかったらしい。理由があるにはあって、この当時(1960年代中頃)は西ドイツの戦車は全てがレオパルド1に更新していたわけでもなく、以前として90mm砲搭載のM47やM48などの戦車が大量に(1000両以上)配備されていたため、これを刷新しようとしていたらしい。M47やM48は重量のワリに装甲が薄く(最大で120mm)2000mの距離でもT-62戦車の主砲の攻撃を防げなかった。また速度が50km/h以上出せなかったので、レオパルド1と共同行動が取れない危惧もあったのかもしれない。だからか知らないけども、試作車を作ってみたら(1969年完成)レオパルド1そっくりになってしまった。ある意味レオパルド1に満足していたのだろうか?。ともあれ、この頃はMBT70の開発が中止されていなかったから、時期主力戦車という構想はなかった。が、MBT70はこの頃から失敗の暗雲が漂っていただろうから、急遽時期主力戦車へと変わっていったといえる。
 1970年には120mm滑空砲搭載の試作車両が完成。1972年から1974年にかけて、105mm滑空砲搭載型といっしょにアメリカに送られてテストが繰り返された。その数は17両で105mm滑空砲型は10両。120mm滑空砲型は7両で、また、その7両がすべて同じ車両というわけでもなく、MBT70時代の20mm対空機関砲搭載型や足回りをMBT70と同じく複雑な機構の油圧式にしたタイプもあった。西ドイツ側としてはせっかく大枚はたいてMBT70を開発したのだから、その技術を少しでも使いたいという考えがあったのかもしれない。結論からいえばMBT70の技術はレオパルド2に組み込まれる事はなかった。油圧式にすると車内が狭くなるし、被弾時の火災の心配もある。対空機関砲も高性能なFCS(射撃統制装置)がないと命中はなかなかに難しかったろう。組み込まれなかった理由は知らないけども、こんな理由だろう。
さて、試験の結果、120mm滑空砲の威力が再認識された。以降の試作型および量産型はすべて120mm滑空砲を搭載するようになった。また、試験はアメリカの砂漠地帯でも行われ暑さと砂の耐久性も証明され、カナダにも送られて寒さの試験も行われた。結果は良好だった。余談ながらこの型(第2次試作型)はアメリカでテストした際にXM-1(後のM1エイブラムズ)と比較試験も行われた。結果は両者ほぼ互角だったという。そのためかアメリカはXM-1をM1エイブラムズとして採用する事になった。効果的な傾斜装甲が評価されたという。
 さて、試験中の1973年には中東戦争が勃発していた。この戦いでイスラエル戦車隊はアラブ軍の対戦車ミサイル”サガー”有線誘導ミサイルによって壊滅的な損害を受けていた。ただの歩兵に戦車が、しかも遠距離からやられていたのである。サガーミサイルは最大射程は3.5キロだけども、この距離ではまず使わない。せいぜい1.5キロあたりが有効的な射程距離だと思うけど、それでも戦車にしてみれば、機関銃弾は届かないし(届くけども曲射になるので命中が難しい)、目標が歩兵ではほとんど見えないから大砲撃っても1発でノックアウトさせるのは難しい。結果的にイスラエルは勝ったけども、この衝撃は全世界に伝わった。各国の軍事評論家は「戦車無用論」を盛んに論じた。西ドイツ軍首脳部はそれを鵜呑みにするほど無能ではなかったけども、装甲の抜本的改革を求められた。そのため、複合装甲といわれる特殊装甲が装備された第3次試作車はこれまでと全く形状が異なりかつてのティーガー1重戦車を思わせる垂直装甲の形状となった。複合装甲とは装甲板の間にセラミックか空間を設けて、対戦車ミサイルの6000℃にもなるという、ジェット噴流をそこで食い止める仕組みだと言われている。実際のところは推定の域を出ず、当然ながらこれは軍の最高機密となっている。ともかく、この垂直装甲という、戦車の流れとは逆流する形の車両が採用される事となった。ただ、後述するけども、あとでこの装甲は大改修を受ける事となった。また、照準器は砲塔右側(上から見て)にがっぽりあいているけども、ここも欠点ではないかと思えなくはない。
 1977年に制式採用され、西ドイツ軍に8ロットに分けて納入を決定した。量産型車両第1号は1979年10月に引き渡され、最後の車両が引き渡されたのは、すでに統一ドイツとなっていた1992年の事だった。採用した国はドイツはもとよりオランダ、スウェーデン、トルコなどでも採用されている。また、スイス、スペインなどではライセンス生産が行われている。
 日本の90式戦車はこのレオパルド2の小型版ともいえるが、直接的には関係ない。ただ、ゲーム「現代大戦略」で登場していることもあり、日本の戦車マニアには一目おかれた戦車であると言えなくはない。


 レオパルド2のバリエーション

 レオパルド2:
 初期の生産型。詳しくは上記を参照の事

 レオパルド2A1:
 外見上で変わったのは横風センサーをなくした点と燃料給油口位置がかわった。また、Made in USAの赤外線センサーを搭載している。既存車両の改良ではなく、生産段階で変更が行われている。

 レオパルド2A2:
 これは、既存のレオパルド2をA1タイプに改修したタイプで詳しくは上記参照

 レオパルド2A3:
 外見上の違いは、砲塔側面にあった給弾ハッチがなくなった。ここがレオパルド2の弱点だったから無くした。また、デジタル通信機のSEM80/90が装備された

 レオパルド2A4:
 外見で変わったのはサイドスカートの変更で、それまでのタイプは第3転輪以降がゆるやかなギザギザだったのに対してA4からは直線になっている。細かい点をいえば、照準器カバーの形状が若干異なっていて、車内にある自動消火装置が新型になった。また、この型からではないけども、キャタピラの形状が若干かわっている。

 レオパルド2A5:
 この型から、レオパルド2は別戦車になったと思えるほど、形状が変わった。それまで垂直装甲だった砲塔はその前面に楔形の追加装甲を施している。中身は複合装甲とされるが、詳細は不明。この楔形装甲は砲塔と車体の間にあるいわゆるショットストラップに砲弾が命中した場合に問題になるのではないかと思えなくはないが、手っ取り早く装甲を強化するためだろうか?。また、砲塔側面にも追加装甲が施されており、サイドスカートにも複合装甲が使われていると言われている。戦車長用の照準器に赤外線センサーが追加され、GPSも組み込まれた。より細かな点だけども、操縦手用に後方確認用テレビモニターが搭載されている。余談ながら戦後のドイツの戦車にはバックミラーが搭載されているけども、それでは飽き足らなかったのだろう。ドイツでは演習時に一般道路を真昼間から通るので必要なのだろうか?。この、特に追加装甲のため重量は59.5tにまで重くなった。

 レオパルド2A6:
 レオパルド2A5までの大砲の44口径120mm滑空砲を55口径120mm滑空砲にしたもの。ただ薬室は同じなので、44口径のと同じ弾が使える。これで初速がアップし攻撃力は高くなった。


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