87式自走高射機関砲
全長:        7.99m
車体長:       ?.??m
全幅:        3.18m
全高:        4.40m
重量:   38t(全備重量)
乗員数:3名

左の写真はkensukeさんからいただきました。ありがとです≦(_ _)≧
著作権はkensukeさんにあるのでここからの転載禁止です
武装:90口径35mm機関砲×1
    (対空弾600発強搭載)
    (地上弾40発搭載)
動力:三菱ZF22WT
    720馬力ディーゼル
    10気筒空冷2サイクル
走行性能:最大速度:53km/h
総生産台数:???両
 第二次世界大戦では日本とドイツ共に航空戦力の格差に悩まされた。ようは空からの攻撃に悩まされたわけだが、ドイツでは戦闘爆撃機による戦術的な攻撃に悩まされたのに対し日本では航空攻撃で戦車がやられたというのはあまりない。日本の戦車は性能が低く、アメリカ・イギリスの戦車はドイツ軍相手には悩まされたものの日本戦車相手にはまさに無敵でわざわざ航空攻撃に頼る必要がなかったのも一因だろう。逆に日本ではB-29による戦略爆撃に悩まされた。当時から今まででもどんなに軍事に疎い人間でもその名前は知っているぐらいに日本で暴れまくられた。ドイツでもB-17がそれに値するのだろうけども、対空防御術が発達していたドイツでは撃墜されたB-17も多かった。
 日本では戦略爆撃に対する防御兵器にはかなり力が入れられており、早い段階で最新鋭の戦闘機を配備してきたし、地対空兵器もナイキやホークなど最新鋭の地対空ミサイルを配備してきた。逆に戦術爆撃機用兵器は遅れてきたといえる。日本(自衛隊)にもなかったというわけでもなく、2連装40mm機関砲を装備したM42ダスターや第二次世界大戦の骨董品であるM15A1自走高射機関砲などがあった。これらは照準にコンピューターを使用せず、どう考えても高速移動する航空機に、特に戦後にはジェット機化して余計に高速移動する航空機には役不足だった。しかし、これら旧式兵器は平成の時代になるまで現役だったのだから恐れ入る。ただ、ベトナム戦争でアメリカ軍機が北ベトナム軍の大口径高射機関砲による損害が増えてくると日本でもそのままではいられなくなったのだろうか。69年にはスイスのL-90高射機関砲を採用するにいたった。このL-90の解説は銃器課の「大口径機銃」の欄に譲るとして、このL-90自体の性能は満足のいくものだった。特に高度なFCS(射撃統制装置)による命中精度は相当に高かった。ただし、牽引対空機関砲のため、機動力にやや劣るのと、これが最大の欠点なのだけども、このL-90は機関砲本体とFCS車両・光学目標指定車両・電源車3両の計5両をケーブルで繋ぐ必要があるので展開に時間がかかった。早い話が移動中に不意に敵機と遭遇しても射撃ができないのだった。せめて戦車と行動を共にできて不意に敵機に遭遇してもすぐ射撃できるような車両を望んだのは当然の選択だったといえる。
 後に87式自走高射機関砲と呼ばれるこの兵器は昭和57年から開発が開始された。車体自体は新規に設計されているものの、動力や足回りや装甲関係は74式戦車のものを流用している。車体が新規設計とはいえ、74式戦車と細かい所は違っているものの外観はほぼ同じ。当然ながら砲塔は全くの新規設計となっている。さぁ作ってしまったらドイツの対空戦車”ゲパルト”とほぼ同じ形状となった。90式戦車とともに、ドイツのパクりみたくなってしまったのだが、理想的な対空自走機関砲を求めると同じ形になってしまうのだろうか?つまり、長砲身の機関砲は車体前面につけると全長が長くなるから、砲塔側面に配置してレーダーは砲塔上に配置するという形状になった。ただ、ゲパルトと違うのは追跡レーダーがゲパルトは砲塔前にあるのに対して87式自走高射機関砲は捜索レーダーと同じく砲塔の上にある。なお、上の写真の一番上が捜索レーダーでその下が追跡レーダーとなっている。搭載している90口径35mm機関砲はL-90とほぼ同様だけども軽量化と放熱のためにスリットが入っている。これもゲパルトからパクったと考えられる。なぜなら、同じ機関砲を装備した89式歩兵戦闘車にはこのスリットがないからである。なお、この35mm対空機関砲はL-90と同じ発射速度なので、1門あたり毎分550発射撃ができる。搭載する弾数は対空弾で600発ちょっとなので、35秒連続射撃したら撃ち尽くしてしまう。無論35秒も連続射撃したら銃身が焼けとけてしまう。
 ただ、中のコンピューター関係は各段に進歩がある。捜索レーダーにがIFF(敵味方識別装置)がついているのは無論として、追跡レーダーだけでなく、レーザー照射機もついていて敵との距離が正確にわかる。ただ、航空機相手には高度がわからないといけないから追跡レーダーに連動した計算機で即座に高度を判定し、また2点間の測定を行なって敵機の速度や予測進路を計算してそこに即座に35mm機関砲弾を撃ちこめるようになっている。レーザー照射装置は単純に距離計算だけでなく、追跡機能ももっていて、レーダーとは独自に運用できるともされている。また、ECCM(ECCM=ECM(電波妨害)に対抗した装置)能力も各段に進歩し、敵が密集して飛んできても単機識別能力もあるので、レーダーや計算機が混乱する事もない。また、複数の敵機が飛んできても一番の脅威目標を自動的に判定してそれから射撃を開始するようになっている。牽引高射機関砲はこういった処理に大量の電力を必要とするため、電源車両を別に必要とするけども、87式自走高射機関砲は補助エンジンを搭載して、単独での射撃が可能になっている。対空射撃だけでなく、車内には対空用600発とは別に40発の対地用徹甲弾を搭載しており、戦車の装甲を貫くのはムリだけども、他の車両ならば充分以上の貫通力がある。
 世界でもトップクラスの高射機関砲である87式自走高射機関砲だけども、欠点もある。これは本車に限ったことではないけども、単価が16億円とベラボーに高い。戦車よりも高い。こんな対空戦車、他の国なら絶対に欲しがらないだろうけども、日本自衛隊の特殊性が生んだ欠点ともいえる。


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