89式装甲戦闘車
全長:        6.80m
車体長:       6.80m
全幅:        3.20m
全高:        2.50m
重量:        26.5t
乗員数:        3名
搭乗歩兵:       7名

左の写真はkensukeさんからいただきました。ありがとです≦(_ _)≧
著作権はkensukeさんにあるのでここからの転載禁止です
武装:79式重MAT×2
    35mm機関砲×1
     7.62mm機関銃×1
動力:6SY31WA
    600馬力ディーゼル
    水冷直列6気筒
    排気量16000cc
走行性能:最大速度:70km/h
行動距離:400km
総生産台数:現在も生産中
 昭和50年代初め頃から、陸上自衛隊では新型戦車の開発を行っていた。後の90式戦車であるが、この新型戦車の最大速度は70km/hを計画していた。73式装甲車の最大速度は60km/hなので、これでは速力不足だった。また、攻撃力も73式装甲車では不足していた。73式装甲車の設計当時、20mm機関砲搭載の砲塔装備が計画されていたものの、砲塔だけで1憶2000万円かかるとされて採用を見送られた経緯もあった。そこで、新型兵員輸送車は機関砲装備で対戦車能力も要求される事となった。踏み込んでいうならば兵員輸送車(APC)を脱皮して歩兵戦闘車(IFV)を要求していたという事である。
 開発開始時期は不明で何時頃試作車両が完成したかも分からないけども、名前のように平成元年に制式化され「89式装甲戦闘車」と命名された。重武装・重装甲ながら速度が70km/hも出せる機動力がある。しかし、ドイツのマルダー装甲車は600馬力で重量が28tちょっとありながら速度は75km/h出せる。重量が軽いのに最高速度が遅いのはなぜだろう?
 この89式装甲戦闘車の一番の欠点は自衛隊装備共通の欠点である価格で、1両が5億8000万円もする。他国の戦車よりもうんと高い。こんなバカ高い歩兵戦闘車なんて普通の軍隊なら絶対に欲しがらないだろう。むしろ73式装甲車の馬力をあげて最高速度を上げたほうがまだ良かったのではなかろうかとも思えなくはないが、実際に搭乗する歩兵にしてみれば、戦車にも充分に太刀打ちできるこんな重武装な歩兵戦闘車ほど頼りにできるものはないのだろう。そういう意味では期待以上に意義がある装甲車両と言える。


 当然の事ながら、前の73式装甲車に比べて外見は大幅に変わっている。むしろドイツのマルダー1歩兵戦闘車の砲塔を大型化して武装を強力にした感じがしなくもない。砲塔側面は垂直ながら、正面は傾斜がつけられて小さい砲弾ぐらいなら滑って跳ね返しそうな感じもする。そのため、主砲がちゃっちい点を除けば戦車といっても通りそうなぐらいの威圧感がある。と思う(笑)。
 武装は35mm機関砲とそれの同軸機銃として7.62mmの74式車載機銃に通称重MATと呼ばれる79式対舟艇対戦車誘導弾発射装置を2器搭載している。35mm機関砲はL90や87式自走対空砲と同一だけど、発射速度を落としている。初速が1385m/sで、1000mで60°傾けた装甲だと40mmまでなら貫通できるという。これは戦車以外ならば全ての装甲車両を撃破可能という(理論上では)事になる。ただ基本的にATM陣地攻撃用だけども、対ヘリにも使えるという。しかしながら対空レーダーもないこの歩兵戦闘車でしかも発射速度が遅いときているから、まぐれ当たりしか期待はできないだろう。7.62mm機銃は、自衛隊虎の子の車載機関銃で発射速度が高く、35mm機関砲のいいアシストとなってくれている。重MATはミサイル自体の重さが33キロと他国の対戦車ミサイルよりは相当重い。この重MAT自体は元々歩兵用として開発されたけども、総重量42キロととても歩兵が持てる重さではなくなってしまい、ある意味での失敗作だったけど車両に載せる分には問題はない。むしろデカい威力のあるミサイルの方がいいに決まっている。しかも79式重MATは上陸用舟艇にも使えるようにHE弾(榴弾)もあるので、かなり使い勝手はよいといえる。しかし89式装甲戦闘車にHE弾が用意されているかは不明。なお、砲塔両方の重MATを発射してしまった場合の再装填は乗員が行う事になっている。こういう兵器の場合、自動装填は難しいので致し方ないけども33キロのミサイルの装填はよほどマッチョな兵士でないと難しいのは想像に固くない。
 搭乗歩兵は7名で、中途半端な感じがする。この乗員分の銃眼がついているのだけど、うち1つは操縦席の横(厳密にはやや後ろ)にある。ここからの射撃はできるのだろうか?
 重量があるので浮航性はない。この装甲・武装で浮航性を持たせるにはうんと車体を大きくしかないからいたしかたないのだろうけども、いろいろと弊害がでてくるのではないだろうか?とも思ったけども90式戦車に随伴が目的なのでさほどの欠点ではないだろう。90式戦車は浮かないのだから。
 また、この歩兵戦闘車から、センターエンジン式ではなく、車体前にエンジンをもってきている。厳密には車体左前方で、操縦手はやかましいエンジン音を聞きながらの運転だろうけども、乗っている乗員にしてみれば安心感があるだろう(車両前方に命中してもエンジンがやられて走行不能になっても、乗員は助かる確率が高い)。そういう意味でも重装甲の歩兵戦闘車と言える。


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