BMP歩兵戦闘車

全長:        6.74m
車体長:       6.74m
全幅:        2.94m
全高:        2.15m
重量:         13.5t
装甲:       ???mm
乗員数:      3+8名

(上記データはBMP-1のものです)
武装:73mm滑腔砲×1
    サガーATM
      発射器×1
    7.62mm機関銃×1
動力:水冷式
    300馬力ディーゼル
走行性能:最大速度:80km/h
       航続距離:500km
総生産台数:不明
  戦車の出現は陸上戦の形態を大きくかえたのは良く知られている。ただ、出現当時の戦車は早歩き程度の速度だった。これは「歩兵の支援」という前提だったからで、その速度でも十分だった。しかし第一次大戦の戦訓で「機動力」が勝敗を決定する事もわかった。特に戦いに敗れたドイツは重々承知しており、機動力を生かした戦車を開発して、1935年の再軍備宣言から堰が崩れるように大量生産・配備していった。機動力が増すのはいいけど問題もあった。歩兵がついてこれないのだった。当時は装甲輸送車両の概念がなく、トラックによる兵員輸送を行っていたものの、路上では戦車がトラックについてこれず、路外ではトラックが戦車についてこれなかった。そのため、特にソビエトでは戦車に歩兵を乗せる戦法を取った。歩兵にとっては楽チンだけど欠点も多かった。ただ乗っかるだけなので、防御力がない。戦車が突進すると大抵は阻止砲火を受ける。戦車が無事でも乗っている歩兵は無事なはずがない。また、戦車のエンジン音で飛んでくる砲弾の音も聞こえない。ソビエトではこの戦車に乗った歩兵の寿命は2週間といわれたほどの大損害を被った。そのため後方から戦場に向かう際だけ乗せて、最前線ではこの戦法は取らなくなっていったものの、戦車単独の行動は危険行為だった。特に第二次大戦中頃から、敵国ドイツは個人携帯用対戦車兵器”パンツァーファウスト”や”パンツァーシュレッケ”といった射程は短いが威力は絶大の兵器を使用するようになったため、特に市街戦でのソビエト戦車の被害が急増した。しかしソビエト軍は有効な策を立てられず結局、数に物を言わせてベルリンまで突進していった。
 戦後になって、強力なアメリカ軍主力のNATO軍と対峙するようになったソビエト軍は地上軍の機動力を重視した兵器を開発していった。特に徒歩の歩兵の足は遅く、歩兵の機動性を増しての電撃戦は特に有効だというのはソビエト軍とドイツは重々承知していた。ソビエト軍は装甲が施された兵員輸送車としてBTRシリーズの装甲兵員輸送車を開発していた。特に有名なのはBTR-50シリーズだった。最大装甲が14mmと砲撃を食らったらイチコロだけども、機関銃弾は充分防げたからこれでも十分だった。ただ、1960年代になって、西ドイツ(当時)で歩兵戦闘車のはしりといえるSPZ12シリーズを配備してきた。これは銃眼がなく、歩兵の出入りも車体上面からしかできないなどの欠点があったけど、「単独で戦闘が行える」という点では画期的だった。ソビエト軍も多いに注目したのは想像に難くはない
 後に「BMP-1」と呼ばれるこの歩兵戦闘車の開発開始時期はわからない。1966年に就役しその何年か後にモスクワ軍事パレードで西側に知られるようになった。就役時期から1960年頃に開発開始がなされたと考えられる。BMP-1が西側諸国の軍事関係者の度肝を抜いたのはその装備と仕組みにあった。対戦車ミサイル「サガー」を搭載し、歩兵支援用に73mm滑腔砲を搭載している。機関銃も1丁搭載しているのは無論だが、仕組みで先進性があったのは銃眼を付けていた点にあった。これは歩兵が下車せずに戦闘が可能で、特に当時は核戦争の脅威があった中なので、戦闘中に核攻撃にさらされても歩兵の身が安全な点にあった。無論、その際は銃眼は使えないけども、砲塔の機関銃や大砲での攻撃続行は可能だった。BMP-1の中の対NBC(核・生物・化学兵器)防御は万全で、中の歩兵は特別に防護服などは着用しなくてもよかった。乗員数はBMP-1の乗員が3名(車長・操縦手・砲手)と兵員8名が乗れた。8名というのは1個分隊の人数で、つまり4両で1個小隊をなした。兵員輸送車と違っているのはこの点があげられると言える。
 ともかく、BMP-1は全世界のアラモード(流行)となり、各国でこの手の歩兵戦闘車が作られるようになった。BMP-1自体も成功作といえ、ソビエト本国だけでなく各国に輸出された。中東やアフリカの親ソビエト国に輸出され、実戦も経験している。兵員輸送や戦闘に活躍していたものの、欠点もあった。装甲が薄かった。基本的にライフル弾の防御能力しかないので、対戦車ミサイルに弱かった。特にLAW(軽量対戦車兵器)やRPG7(ソビエトの傑作対戦車ロケット)が使われ出した頃なので、これにやられるBMP-1も多かった。そのためかイラク軍装備のBMP-1では前面に追加装甲が施されていた。また、銃眼もあまり実用的ではなかった。走行中では狙いが定まらないし(ゆれるので)止まって撃とうもんなら対戦車ロケットのエジキになるだけだった。
 ただ、機甲師団の機械化歩兵としての運用では有効だったから、ソビエトではBMP-2やBMP-3と発展していった。機構詳細は後述するけども、それだけに期待された歩兵戦闘車であったし、今でもそうだろう。しかし、BMP-3は本格的な配備の前にソビエトがなくなったのは残念な事だろう。


 BMP歩兵戦闘車のバリエーション

 BMP-1:
 上記本文で触れたように歩兵戦闘車としては革新的なコンセプトをもつ兵器だった。搭乗歩兵は乗車戦闘が可能で、降車しても、車体自体が支援火器が豊富で対戦車ミサイルももつという搭乗歩兵にとってはまさに頼もしい歩兵戦闘車だったと言える。ただ、支援大砲が73mm滑腔砲だったけども、なんで73mmという中途半端な大砲にしたのかは不明。ライフリングが施されなかった理由も分からない。HEAT弾を発射するためだろうか?。また、73mm砲は専門の装填手がいなかったので、砲手が装填も行っていたので発射速度は低かったと想像される。もっとも揚弾機を搭載していたので、砲手は砲弾をよっこらしょっと乗せれば装填はしてくれたけども、完全自動式ではないから、砲手の苦労も大きかったろう。車体も浮航構造で水上では8km/hで動けた。また、車体は前方がかなり傾斜がとられていて、戦車砲防御は無理でも大口径機関銃はそらせることができると思われる。避弾径始に優れた車体は水上航行時に水に沈みやすくなるという欠点があるので、車体前方に水切り板があるのはアメリカの戦場タクシーM113と同じである。乗員は3名で、他に搭乗歩兵が8名乗れた。この8名はすべて後部に搭乗した。
 1982年まで生産が行われた。ソビエト本国だけでなく、東欧や中東などでもライセンス生産がなされていた。総生産数は不明。

 BMP-2:
 BMP-1の発展型。1982年に登場した。砲塔が2名砲塔になり、大型となった。そのために後部乗員部が小さくなり、左右に3人ずつの6人となった。ただ、2名砲塔の中に車長が移ったので、もとの車長の席にも歩兵が乗れたので、搭乗歩兵は1人減の7名となった。この砲塔は大型化しただけでなく、73mm滑腔砲を30mm機関砲に変更している点が大きい。装甲貫通力がこっちが上だったからというのが理由だとされる。実際、この頃には西側諸国も歩兵戦闘車の開発・配備をしており、これらとの戦闘も考慮せねばならなかったという理由が大きいだろう。また、手動装填の大砲よりもベルト装填の機関砲が手間がかからないという現実的な理由もあったかもしれない。また、ミサイルが、有線誘導のサガーミサイルから、無線誘導のスワッターミサイルに変更がなされている。
 全幅3.15m 全高2.45m 重量14.5t 最高速度65km/h 乗員3名 搭乗歩兵7名 武装は上記参照 その他のスペックはBMP-1と同じ。全高が高くなっているのは、対戦車ミサイル発射チューブが砲塔上に付いたというのが理由。BMP-1の砲塔前の装備では死角があったからだといわれている。生産数は不明。

 BMP-3:
 BMP歩兵戦闘車シリーズの最新型。大きさは前述2つとあまり変わらないけども、車体・砲塔ともに大きく変更されている。別の車種といってもいいかもしれない。砲塔は30mm機関砲と100mm滑腔砲を両方装備している。なおかつ同軸機関銃もある。BMP-2で大砲を撤去したのを惜しんだのかは知らない。この100mm砲はミサイル発射装置を兼用している。車体も、PT-76を思わせる船型になっている。前面装甲強化のため、エンジンを車体後方に移しているので、乗員配置も相当かわっている。今までのBMPは前方右側にエンジンがあったため、操縦手は左前にいたけども、BMP-3では前方中心にいる。2名砲塔はそのままで車長と砲手がいる。その砲塔とエンジンの間に5名の歩兵が乗車できる。ただ、搭乗歩兵は5名減ったのではなく、操縦手の左右に1人ずつ乗車できる。ただ乗車できるのではなく、この2名は前方機銃手になる。早い話が、100mm砲+30mm機関砲+7.62mm機関銃×3の世界一重武装な歩兵戦闘車となった。完成が1990年とソビエト末期で、すぐにロシアに変わった上にそのロシアが財政難のために配備は進んでいないといわれている。配備以前に「こんな重武装な歩兵戦闘車が必要なのか?」という討議がなされているのかもしれない。
 全長6.72m 全幅3.3m 全高2.45m 重量18.7t エンジン600馬力(諸説ある) 最高速度70km/h(水上10km/h) 乗員3名 搭乗歩兵7名 武装は上記参照 


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