SU-76自走砲

全長:        4.97m
車体長:       4.97m
全幅:        2.72m
全高:        2.10m
重量:         10.2t
装甲:     最大35mm
乗員数:        4名
武装:76.2mm砲×1
動力:GAZ203
    85馬力ガソリン機関
    (2つ装備)
走行性能:最大速度:45km/h
       航続距離:500km
総生産台数:13932両
 かつての75mmクラスの大砲といえば、野砲として各国とも使用されていた。野砲とはその名前のように野戦で使う大砲で、昔はお馬さんで引っ張っていた。お馬さんで引っ張る以上は重量にはおのずと限界があり、大砲総重量もだいたい1.5tあたりが限界だった。1920年代後半になってくると、より馬力があるキャタピラ付き牽引車が普及しだしたので、この野砲というカテゴリーの兵器も大口径化していった。ソビエトでもかつての野砲76.2mm砲の砲身を長くしてカノン砲化し、122mm砲をかつての野砲の地位に据えた。これは各国では105mmクラスがそれに該当したのに比べれも威力は大きかったし、数量的にも同等かそれ以上だった。
 野砲の話はここまでにして、76.2mmカノン砲(Zis-3)は初速が大きかったせいもあり、歩兵の支援だけではなく、対戦車戦闘にも従事した。この威力は相当なもので、ドイツ軍も悩まされた。ドイツ軍に捕獲された76.2mmカノン砲はそのまま自軍の戦車に搭載され、元の持ち主のソビエト軍に対して火を吹いた。特に当時のドイツではT-34戦車やKV-1重戦車を正面から撃ちぬける大砲が88mm高射砲しかなく、その他ではこの捕獲した76.2mmカノン砲しかなかったために、相当に重宝がられた。
 ここで、注目すべきは、対戦車砲のまま使ったのではなく「車両に搭載した」ということで、ようは進撃していくと、どうしても牽引車での牽引では第一線の機動力に随伴できない場合もあった。対戦車砲は陣地構築を完璧に行えば戦車よりも手ごわい相手となったが、使う側もいちいち穴堀りしないといけないのでメンドいといえばメンドく、また手間も時間もかかった。

「ドイツ軍 今日も明日をも 待ち受けて 今日も掘り掘り 明日も掘り掘り」

こういう狂歌が歌われそうな感じもしなくもない(謎)。
 1942年の後半になってくると、ソビエト軍も逆襲に転じるようになった。ここで問題になったのは、対戦車砲の機動力の問題だった。とにかく機動力を!という事だろうか、T-70軽戦車の車体にZis-3 76.2mm砲を乗せて完成させたのがこのSU-76だった。原型のT-70軽戦車と違う点は、そのままだと76.2mm砲が乗せられないので車体を長くした。そのために転輪が1つ増えた。エンジンを前方に置き、後部戦闘室を広くしたため発射速度は最高の条件で毎分20発撃てたという。ただ、装甲は前と側面に機銃弾を防げる程度を囲って、上と後ろはガラ空きだった。ある意味、ドイツのマルダー2みたくなってしまったといえる。同じコンセプトで作ってしまうと、どうしても同じになってしまうのだろうか?上がガラ空きなせいか、発射速度が多いワリには乗員からの評判は良くなく、スーカ(畜生)とアダ名されていたらしい。
 さて、1942年12月には制式採用され、この時に「SU-76」と正式に命名された。配備先は軽自走砲連隊が主だった。ただ、自走砲といっても、もっぱら対戦車戦闘に従事している。それなりの戦果を上げてはいるものの、ドイツ軍の重戦車相手には役不足だった。そのために、後継機種であるSU-85自走砲やSU-100自走砲が作られたものの、SU-76自走砲自体の生産は終戦の年である1945年まで行われた。さすがに、末期になると、76.2mm砲では力不足であったと思われるが、もっとも、ドイツ軍の戦車も全てがティーガーやパンターであったわけでもないし、4号戦車相手では十分な活躍はできたと想像される。ただ、防御の面では3号戦車相手でも容易に撃ちぬかれた。1945年まで生産が続行されたのも、単純に共産主義体制のため計画を遵守して小回りが利かない生産体制だったというだけでなく、損耗が激しく補充の需要がとてつもなく多かったからではないかなとも思える。
 SU-76はいかにも急造な感じが見て取れるのが、主砲部分で、駐退器を小さくしなかったのかできなかったのか知らないけども、そのままの大きさにしていた。そこをカバーで覆っているので、大砲基部がかなりごっつい。まぁ、剥き出しにしていた日本の3式中戦車に比べればマシか・・・。

 SU-76は生産当初はエンジン構造が欠点だったとされる。この問題を解決し生産されたのがSU-76Mと呼称されるが、後にSU-76と名称変更となった。外見上では変化がほとんどなかったからだろうけど、欠陥車をもみ消すという意味合いもなきにしもあらずと言える。
 バリエーションとしては、SU-76の車体に37mm対空機関砲を搭載したZSU-37が作られた。生産数は不明。ソビエト絶対有利の時期につくられたせいか生産数は多くなかったらしい。


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