T-55戦車

全長:        9.00m
車体長:       6.45m
全幅:        3.27m
全高:        2.40m
重量:         36.0t
装甲:       ???mm
乗員数:        4名
武装:54口径100mm砲×1
    12.7mm機関銃×1
    7.62mm機関銃×1
動力:580馬力ディーゼル
走行性能:最大速度:51km/h
       航続距離:500km
総生産台数:60000両以上
 第2次大戦中、ソビエト軍がT-34戦車を主力にドイツ軍を押しきった。T-34戦車は戦前に開発された戦車だけども、改良を重ねていき、ドイツ中戦車よりも常に優れた性能を発揮していた。そんな優れた戦車もいずれ旧式化する。それを承知していたソビエト軍は大戦末にT-34戦車の後継にT-44戦車を作った。しかし、T-34戦車が優れていたせいもあって、第2次大戦ではあまり活躍をしなかった。T-44戦車が大規模に使われたのは、1950年に始まった朝鮮戦争だった。わずか5年のブランクだったけども、敵(アメリカ軍)の戦車発達は著しかった。90mm砲搭載のM47戦車には歯がたたなかったのだった。
 85mm砲がアメリカ軍戦車通用しないとはっきり分かったため、100mm砲搭載のT-55戦車が急遽作られたかというとそうではない。T-55戦車の前身であるT-54戦車の開発は戦後まもなくに行われていた。T-44戦車がT-34戦車と大差ない性能だったためだと想像される(余談ながらT-44とT-34の違いはエンジン配置が縦から横に変わっている)。T-54戦車の試作車両では85mm砲が搭載されていた。それが朝鮮戦争の戦訓で後に100mm砲に変えられる事となった。また、T-54戦車の初期型では砲塔下と車体上面の間があいており、ここに砲弾が命中すると、ここは装甲が薄いので貫通されたり、貫通を免れても砲塔の旋回が不能になるという欠点があった。そのため幾度か改良が重ねられていき、ついにT-54Aでは、完全にショットストラップをなくす事に成功した。このT-54Aの小改良型がT-55戦車だった。改良点といってもエンジンを520馬力から580馬力にパワーアップさせた程度で、外見上の違いはほとんどなかった。唯一外見で判断できるのは砲塔上にある換気ドームの有無だけだった(T-55戦車には換気ドームがない)。そのため、この戦車は「T-54/55」と呼ばれるのが一般である。
 T-55戦車は東側諸国や第3諸国へ数多く配備されていた。第二次大戦後に一番の戦車戦が展開された中東戦争でも、アラブ軍が多数が使用した。ただ、上記の利点が多いと宣伝されたワリには決定的な活躍はしていない。活躍どころか、多数がイスラエル軍に捕獲され、イスラエル軍仕様T-55戦車(T1-67)として使われている。これは我彼の戦車兵技量の差が大きい。あと、T-55戦車が弱いと我々が思い込んだ決定的な戦争は、湾岸戦争で、イラク軍のT-55戦車は一矢も報いる事なく、ただの的みたいな存在となり、むなしく撃破されまくった。湾岸戦争の映像で撃破されたイラク軍戦車の映像はたいていがこのT-55戦車だった。
 しかし、T-55戦車の弁護をするとすれば、戦車兵の技量がよかったら、空軍力が差がなかったら、十分に活躍できた戦車だった。だからこそ、6万両以上が作られたのだったし、ライセンス生産・デッドコピー生産が各国で行われたけども、それを合わせるとゆうに10万両以上が生産された。ここまで生産された戦車は今まででもないし、これからも絶対にないだろう。それほど期待された戦車だった。
 しかしながら、扱う人間の技量が敵に劣っていれば、総合的軍事力の差が大きければ、こんな惨めな末路をたどるのか・・・。という見本を示したのもこの戦車だったと言えなくはない。その意味では不幸な戦車だったと言えるかもしれない。

 T-55戦車は上で書いたように、各国での生産を含めればゆうに10万両以上が生産されたと見られる。ただ、現存するのはそう多くはない。戦闘消耗もあったけども、大半は旧式化してスクラップにされた。ドイツ統一の際に東ドイツ軍が装備していたT-55戦車は全て廃棄処分となっている。ソビエト崩壊後の軍縮でロシアにあるT-55戦車も多くが売却されたかスクラップになった。ロシアでのT-55戦車のスクラップシーンでガスバーナーで装甲が切られるところがあったけども、最大装甲210mmと謡われたこのT-55戦車をあたかもチーズを切っているかのように切断していたので、本当にそんなに装甲が厚かったのかなぁと思われるシーンもあった。
 ただ、現存するT-55戦車もまだまだ多い。ただ、そのままではどうも使い勝手が悪いので、多くは追加装甲を施したり、レーザー測距器を装備したりして近代化して使用している。主砲を西側の105mm砲に変えているのもある。ただ、エンジンはそのままなので、機動力は当然落ちた。致し方ない所だろう。


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